第12話


 俺とロックマンさん筋肉バカは隣国のロームン帝国に来ている。

 

 王国で生きるには俺は、いい意味でも悪い意味でもお尋ね者・・・・

 ロックマンさん筋肉バカは知名度が高すぎる。


 「なぁ、親父・・

 「なんだ?ヒロキ」


 帝国は湿度が高く、亜熱帯気候っぽいせいもあり文化体系が地球のミャンマーや沖縄や北アフリカやらに近い。もちろん食文化も。


 冷房はまだない(ストレージ内には旧文明のアーティファクトとしてある)世界だから暑い。

 蝉(せみ)は、この世界にいないみたいだけど「ケケケケケコケコ」と鳴く虫の声が賑やかだ。


 そこの地方都市で俺とロックマンさんバカ親父は親子として生活している。

 「これ…… 辛すぎない?」

 「うむ?そうか辛いか?」


 屋台の外には木の平椅子がたくさん並び、住民が思い思いの場所でご飯を食べている。タイやベトナムの屋台風景を思い描いてもらえたら嬉しい。


 ただねぇ、暑い国特有の香辛料の辛さがヤバイのと香菜(パクチー)みたいに匂いがある食べ物が多い。

 辛さや香りに強いロックマンさんバカ親父はズルズルと麺料理フォー的な何かを食べるんだけど、俺には合わない。


 うんうんと唸りながら、ピタパンに入った辛めの鶏肉料理に齧(かぶ)り付く。うん、辛い。


 「…… ヒロキ、客が来たようだぞ」

 「うん?」


 そんな俺たちの食事している席に来訪者。うぁ、口(くち)リセットに飲んだジュース甘ぇぇ……


 「あの、冒険者ギルドからお話を聞いたんですが…… 探し物の…… 」

 「はい、聞いています私達がそうですよ」

 冒険者証を見せると男性はホッと笑顔になる。


 美人のお姉さんと思った?残念ー(俺が)


 今、俺たちは探し物特化の冒険者として、この国で遊んで暮らしている。



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 仕事ではなく遊びというのは、ほとんどが善意のような価格で仕事を受けるからだ。


 初めて仕事を受けた時はロックマンさんバカ親父の眼光がエグかった。元々は平民だったロックマンさんバカ親父は金勘定はうるさかった…… と言っても無駄遣いをしないタイプの日本人的には普通の金銭感覚だ。


 これは、このまま齟齬(そご)あるまま暮らしたらいつか喧嘩になるとストレージにある金をほんの塵みたいな一部、大金貨100000枚を当日借りの倉庫で出してみた…… これでもほんの一部だよ?えへへ


 成金のようにエッヘンなポーズにテカテカな顔をする俺にロックマンさんバカ親父は鼻水を吹き出した。

 

 「私が今までした過酷怒涛の仕事は何だったのか?」


 ロックマンさんバカ親父はそう呟くと大笑いした。


 そこからは、もう2人は自由人のように暇つぶしに仕事をするようになったのだ。


 「えっと、今回の仕事は…… 」

 依頼を受けてホテルに引っ込みロックマンさんバカ親父と2人会議をする。


 現在と未来において金の心配がない2人なので心穏やか余裕余裕での話し合い。


 「うむ、野盗に盗まれた家宝の髪飾りティアラの奪還…… あるか?」

 「うーん、ある…… みたい」


 シュンとストレージから依頼対象のティアラを取り出す。

 分かった?そう、ロックマンさんバカ親父にはだいたいの事を話した。地球人である事や命が複数あるのとかは内緒だけど、この世界にあるもののだいたい・・・・は持っている事をね。


 秘密にするには大きすぎるし、秘密にしたままだと一緒に生活できないからね…… 面倒臭くなったのが実際なんです。


 「ふむ、なら後は野盗を抑えるだけか」

 「うん、そだねー」


 このまま、依頼者に物を渡すのもアリだけど俺たちは暇つぶし・・・・が目当て。

 一応は捜査をするんだぜ!


 「えっと、洞窟で潜伏してるっぽいけど親父は[夜目よめ]のスキルある?」

 「いや、持ってないな」

 「じゃあ…… はい」


 椅子に座りながら、いつもの日常のようにスキル習得のスクロールを渡すと、茶を飲みながらそれを受けるロックマンさんバカ親父


 もう、こんな日常がしばらく続いている。



 ロックマンさんバカ親父と俺は暇つぶしの度に必要なスキルをどんどん習得して、なんかよく分からない所まで来ている。


 「さて…… 」

 「さて、」

 「行きますか!」


 今回の依頼料はホテルの一日宿泊料の半額以下、赤字も赤字。でも暇つぶしもできるし、喜ばれるしええやん。ええやん。


 俺たちは野盗団を潰しに夜に出発した。

 あー、今晩も暑いなぁ…… 次は寒い国に行こうとロックマンさんバカ親父を説得しようかな?

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