第10話
はい、解放されませんでした。
よく考えたら当然なんだよね。鑑定[極]は、どうやらこの世界ではレアで、鑑定が使える人がいてもレベルが低いのがほとんど。
熟練度が高い[鑑定]を使う人が少ないならば、俺の提供したエリクシール剤が本物か分かったもんじゃないと思われただろう…… あれ? 本物だよね? ストレージから出した
ま…… まあ、とにかくだ、実際に使用して『本物』と分かるまで行(こう)を共にする許可が出た…… 許可要らないです。なんだよ行(こう)って。強制連行とか言えよカッコつけめ!
もちろんそれは建前で監視ですねすみません。死ね。
おそらく、エリクシール剤が偽物だとなるとバサ————ッ!と俺はやられて命を取られるんだろう。
あれ?ホントに本物か心配になりだしたぞ?
かくして王城からまた馬車に揺られて俺はモノホシ公爵領へ移送される。異世界に来て馬車ばっかり乗ってるな。ゲームなら実績が出るレベルだ。
ピコーン《馬車乗りの称号を得ました)
マジかよ女神様要らないよ!
「ヒロキ少年どうした?」
「………… いえ、何でもありません」
そして監視の役目はまだまだ
シュッシュッシュ——————ッッ……!!
うるせぇよメガネ秘書、なんでアナタまでいるのさ
「…… はぁ」
ウンザリしながら俺は代わり映えのしない道に馬車窓から目をやりため息をついた。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
────── エリクシール剤は風邪薬のように段々と治るとかではなく、いきなりの回復である──── 旅人ワールの旅の日記より一部抜粋
モノホシ公爵領の邸宅に到着すると、早々に広間に通され先馬(さきうま)で知らせを受けていたモノホシ公爵が運び込まれただろう部屋に不釣り合いなベッドの上で待機していた。
「卿(けい)がヒロキであるか?」
「はい、私がヒロキです」
膝を降り、頭を垂れながら答える。
ハッキリ言うとしたくない所作でござる。
明確に!明確に!自分の与えられたストレージがチートでござるのに、前世の地球の頃みたいにヘコヘコしたくないでござる。ああ、隠遁(いんとん)してぇ…… あ、女の子とは繋がりたいなぁへへへ。
公爵さんはベッドに腹筋を使って座っているが、手足がない。
遊んで体を壊されたのか?
「さて
「
「薬をこちらに」
あれあれぇ?俺の後ろに公爵さんの騎士が2人並んで剣を首に添えたぞぉ?
もし、エリクシール剤が偽物ならスパンと首を刎(は)ねられる…… と?
「あなた、まず誰かに毒味を」
「いや、このまま生きているのは死んだも同じ。今更(いまさら)この薬を飲むのを怖がる必要はない」
おおぉ…… ちょっと待って下さいよぉ。
なんか感動の夫婦愛みたいになってますが、俺の命を道連れにしないでください。いや、本物です、本物ですけどぉ!
ダラダラと脂汗をかきながら
ふぇぇぇぇ…… ストレージさん本物ですよね!?
「くっ。」
公爵さんの口にエリクシール剤が流れ込む……
まぁ、あれだ分かっていると思うけどもちろん本物でしたー!
喜び合う公爵家の人々
ゆっくりと逃げようとする俺
その逃げ道を阻む
「勘弁して下さいよぉー」
「ヒロキ少年、まぁまぁ」
「何が「まぁまぁ」なんすかぁー」
そのまま、公爵家にある窓の無い部屋に軟禁されました……
が!が!ですよ!
「へへへへ…… 」
夜中に[隠密]を使いまんまと逃げ出しました!
いやー!怖い!
何だかね!このままだと、エリクシール剤提供袋として酷使される未来しか見えなかった!
[隠密]を使って待機して、軟禁部屋に水差しを運んできたメイドさんの頭の匂いを軽く嗅いでから部屋を脱出! ふかふか廊下を走り開いていた窓から庭にバサリ!
ピンポンダッシュする悪ガキのようにチラチラと公爵家の建物を振り返りながらダッシュダッシュ!
一瞬、
貴族街から商業区を走り、あくびをする街の外門に待機する衛兵の横をすり抜け街道を走らず横にずれて森の中に入った所で息をついた。
「えっと!えっと!!」
脳内でストレージの中を高速で漁る。
「これだ!」
[飛行のマント]
羽織る事で空を飛ぶ事が出来る。
10キロの飛行ごとに一度、地上に降りる必要がある。次に使うまで30分のクールタイムが必要。
バサッとストレージから取り出した俺の身長よりかなり長いマントを地面にズリながら羽織り俺は空に飛び上がり、制御が分からないからフラフラしながらも逃げる事に成功し…… ええっ!?
「ちょわっ!」
「ヒロキ少年!!!」
あっぶね─────── !
まさかの追いついてきた
「降りてきなさいヒロキ少年!」
「すみません!すみません!」
こえぇ!なんで地面を走る哺乳類が空を飛んでいる者に追いつけるんだ!?もう森だぞここ?見えてないだろそれに!?
「あ!あそこ!」
「ぐっ!」
ちょうど、流れが早い大型河川が目の前に!これを飛び渡れば流石に…… !
「ヒロキ少年──────────!」
「こえぇぇぇぇぇ!!」
え?何で河川を水切り石みたいに水の表面を跳ねて渡れるの!?
バシャン!バシャン!バシャ──────!
おぉう…… 河川の真ん中ぐらいで水に沈んだ
流れていく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます