第2話

 「おっほーい! 」

 俺は喜びの舞を踊った。なぜか?ごっつい俺の顔が良くなっていたからだ!


 異世界には問題無く辿り着いた。だいたい500メートル向こうに街が見える草原に天界から降ろしてくれたようで魔物やら盗賊やらに襲われて命の回数を減らす事も無かった。



 さっそく体を確認するとメタボ腹がスッキリ。機動力が明らかに上がった身体と絶対に取れなかった目頭のネバつき腰の痛みが無くなっている。


 もしかしたら…… 焦りもたつく足で街の近くを流れる川を覗く。


 「…… 若い体に、イケメンだ…… 」

 そして踊った。地球で生きてきて『容姿』はかなり重要だ仕事でも生活でも…… それを俺は手に入れた…… それに黒髪がフサフサだ……。


 張り手してもペチャンとしか鳴らなかったビール腹はギュッと筋肉で締まり意志の強そうな綺麗な目は頑張り次第ではハリウッド俳優になれるレベルに整っていた。もうね、1.5キアヌぐらいあるよこれ。


 的をリックスする映画を思い出しながら、これからどうするか考える。


 「まぁ、街に行くのはもちろんだけど」

 まずは状況の確認だろう。服は麻の上下、腰には皮袋が吊るされている、吊るしたまま覗くと金貨が数枚入っている。


 「女神様が用意してくれたんだろうな。ありがとうございます」

 金額は分からないけど好意で用意してくれているんだから少しの間は生活できるぐらいはあるんだろう。


 あとは…… やっぱり銀河系の神様がくれたストレージを確認しておきたい。


 会話の中に違和感があった。

 神様の考える無限量の収納量って……


 ストレージを意識すると頭の中にイメージが出る。


・収納数 0/∞

・ソート 数量順・レア順

・検索

・分解

※生物は収納できない



 便利すぎじゃね? 神様ってgoogleの何かかな?


 「うーん」

 俺は唸った…… そして考えた、もうじっくりと5分ぐらい。


 「神様の観点からの無限の量…… 3度の命…… 怖いけど試すのはアリ……かな? 」


 銀河系を統べる者の無限量、3度の命、死んだら時間が巻き戻る、他の人や事象から介入できない……

 ぶつぶつと復唱しながらゆっくりと座り、地面に手をつく。


 「この惑星ごと全てを…… 収納…… 」


 その瞬間に全ての台地や見えていた街が消える。それだけではなく空さえも……


 「ぐぅぅぅ—————!!!! 」



 重力が一気に押し寄せ弾ける。


 暗黒の空間に塵のように生物が放り出される。


 街の住人だろうか、人とぶつかり巨大な生物に当たり…… あれは竜か? さすがファンタジー! 竜の背中にべチャリとぶつかり意識を失った。



 ストン、


 そして俺は惑星をストレージ収納する寸前の草原に戻っていた。


 「はぁ…… はぁ…… 」

 1度目は知らない間に死んでいたから分からなかったけど、死ぬのって辛いな……

 草原に四つん這いになり息を整える。


 下痢になってもいいやと這いながら川の水を飲んでゴロリと倒れ空を見上げる。

 あれ?ストレージに水あるじゃん。まぁ…… いいか、ははは。


 「…… 入ってるよ…… なんだこれ…… ははは…… 」

 自分でしておきながら笑ってしまう。


 俺のストレージの中には


・収納数 1/∞

ルーンド(惑星)ソート推奨



 という文字が浮かんでいた。


 「そっか、この星の名前はルーンドって言うのか」

 俺は落ち着こうと的外れな事をつぶやいていた。




□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



 「こんちわー」

 「おう、どうした? こんな田舎の町に」

 俺はとりあえず、人に会いたくなって街に辿り着いた。


 「門番さん、はじめまして。旅をしている西宏樹といいます」

 「おお、丁寧な挨拶だな」


 どうやら言葉は通じるようだ。なにこれ不思議パワーなの?

 『田舎の』と門番さんが自分で言うだけあって装備は土汚れているが体格は良く顔に泥をつけながらも嫌味なく笑う門番に心のどこかで安堵する。


 「ニシ? 貴族か何かか? 」

 「いえ、言い間違いじゃないですかーヒロキといいます」


 っぶねーな、貴族とか嫌だよ揉め事はかんべん。


 「ヒロキ、一応は身分証が必要なんだが大丈夫か? 金が無いなら薬草とか摘んできて代わりにしてもいいからな」

 「いえ、一応は商人紛いな事もしているのでお金は少しあります。いくらですか?」

 

 銅貨一枚という門番さんの答えに、ストレージから銅貨を一枚取り出す。


 「おお、ストレージ持ちか! 若いのに商人の能力(アビリティ)あるとは、やるなヒロキ」

 「まあね! 」


 どうやらストレージは存在する能力(アビリティ)らしい、田舎の町に入るには銅貨一枚、ストレージは隠さなくていいというのは大きな情報素材だなうん。


 ソバの町へようこそ、という門番の身振りに笑顔で肯き街に入る。

 

 …… あるな。


 少し歩き商店街であろう通りに出る。

 そこに並ぶ『ソバの街にある雑貨店』をストレージの検索で探すとおそらく合致する店を持ってる・・・・と確認できた。

 まだ、合っているか分からないけどね。


 

 「こんにちはー」

 「はい、いらっしゃい」


 シャララ〜〜ン♪という扉の防犯用パイプチャイムを鳴らし入店する。

 「おや、見かけない顔だね。旅人さんかな? 」

 「はい、それ兼(けん)で商人とかしていますー」


 雑貨店は太陽光をふんだんに活用した木製の造りになっていた。

 さすが異世界、ポーションや魔道具などのポップもある。店の品物の置き方は田舎の駄菓子屋のようで落ち着く。

 「商人と兼業とか言わずにそれなら旅商人でいいんじゃない? 」


 妙齢の女性店員のツッコミに笑顔答える。


 「何を探してるの? 」

 市場調査でーすとは言わない。文化が進んでいないだろうこの世界ではギャグにならないだろうなー。


 「えっと購入はポーションと、興味があるので一番高い物を見せて欲しいです」

 「…… 変な事したら衛兵を呼ぶよ? 」


 大丈夫ですってと苦笑しながら金貨をジャラリとカウンターに並べる。

 「ストレージ持ちで、金もあるか…… 冷やかしでは無いし、泥棒ではないと思いたいね。しかし身分代わりに金貨を並べるかね。若いのに見せ金とか…… フフ、いいよウチで一番高い商品はこれさ」



 自己完結お姉様ありがとうです。と心の中で100回唱えながら出された2つの商品を見る…… 紙? 布?


 「…… これは? 」

 「そうさこれは技と魔法のスクロールさ、凄いだろう? 」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る