他人の食べ方に文句を言うな!
食べ方には人それぞれのこだわりがある。
猛暑続く中、食欲減退のため涼を得るべく、夕食にせいろ蕎麦など用意したのだが(わざわざせいろを購入したのだ)、食卓において信じられない光景を見た。なんと、彼女ちゃんがそばつゆにそばをじゃぶじゃぶとつけはじめたのである。これは堪らない。僕は思わず、「あっ」と声を出し箸を止めた。
「どうしたの?」
どうしたの? だと? そんな蕎麦の食べ方を俺の前でしながらよくもまぁ呑気な事を言っていられる。普段大体の事に関して寛容な俺であるが、こればかりは物申さなければならないだろう。
「あの、恐れながら、蕎麦の食べ方をご存じない?」
「は?」
「蕎麦の食べ方を存じてない? せいろってのはね、そんなつゆに浸して食べるもんじゃなく、こう、三割ほどつけてズズっと……」
「はぁぁぁぁぁうっさいなぁグルメ気どりですかぉぉぉぉぉ!? そんな職知識存じてるんですぅ! 存じているうえであえてこうして食べてるんですぅ! こっちの方が美味しいんですぅ!」
「美味しいとか美味しくないとかじゃなくて、食べ方として……」
「そんな事言ったら下妻氏だってカレー混ぜて食べるじゃん! あれだって冒涜的じゃん! 謝って! インド人に謝って!」
「あれは……生卵のせる時だけだし……」
「あんたカレーにいっつも生卵のせてんじゃん! 実質いつもじゃん! エブリディエッグパーティじゃん!」
「そ、そんなにのせてないし!」
「のせてますー先月のカレー全部卵のせてましたー卵月間絶賛継続中でしたー」
言われてみれば確かにのせていたような気がする……
「だいたい食べ物なんて美味しければいいの! コース料理でもないんだから! 蕎麦を浸して食べるのもカレーを混ぜて食べるのも問題なし! はい! この話おわり! わかった!?」
「……はい。わかりました」
分からされた。
本日のQ&A
Q.彼女と食の価値観が合わないんですが。
A.育ちが違えば趣向や食べ方が違うのも当然。どうしても無理なら別れろ。一生気になるから。
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