誘いを断るな!
感性というのは当然人それぞれ異なるものである。
「下妻氏ー映画観に行こー映画」
映画か。それはかまわんが、彼女ちゃんが言うと嫌な予感しかしない。というか、確実にあれだろうという確信がある。
「……何が観たいの?」
「決まってんじゃん! ワニのやつ!」
やっぱりね。そうだろと思ったよ。いや、俺自身はいいんだよ。どちらかというとイメージは悪いけど、親の仇が如く憎しむなんて事はない。けどなぁ……観ちゃうとなぁ……どうしても他の視聴者の感想追っちゃって、アンチと信者が吐き出す感情の毒に侵食されるんだよなぁ……そうなるとメンタルキツい。……よって、ここはどうにかして避けたい所存。よし、さり気なく他の映画をすすめよう。
「それより、どうせ観るならガンダムにしない? なんか今までと違う切り口で面白いらしいよ。今話題の声優も出てるんだって」
声優のワード出しとけば多少気が惹かれるだろう。彼女ちゃんのオタパワーに賭ける。
「もう観た」
そっかーガンダム観ちゃってたかー先行だったかー。
「なら、不良のやつは? あれもいいらしいよ」
「不良好きくない」
えーお前バキで柴千春推してたじゃーん。嫌いなのー?
「下妻氏」
「はい」
「下妻氏が観たく理由も分かる。あやがついて、なんか気持ち的に進まない。ただでさえちょっと狙い過ぎたコンテンツなだけに、どこかで拒絶してしまう。分かる。分かるよぉその気持ち」
こいつ……俺の心理を完全に読んでる……そのうえで……
「でも私が観たいから行こうね」
尚も誘ってくるのである。
「ね、いいでしょ?」
「……はい」
こうなってはもうお手上げ。僕に拒否権などなく、共に映画館へ行くしかないのだった。
本日のQ&A
Q.彼女が観たいといった映画にちっとも興味が湧かないのですが断ってもいいでしょうか。
A.それくらい付き合ってやれ。仮に結婚したらもっと長い時間付き合わなきゃならないんだから。
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