推しを間違えるな!

 推しの論争というのは、不毛なものだ。




 ある日帰ると彼女が北斗の拳を読み漁っていた。分からんでもない。たまに読みたくなるよね。


「あ、お帰りー。ねぇねぇ下妻氏―。下妻氏は北斗の拳で誰が好きぃ?」


 おっといきなりの選択肢。これは地雷を踏み抜く可能性大。なにせ彼女ちゃん。ストリートファイターで「ガイルが好き」って言っただけで敵認定してくる強力解釈の持ち主。ここは無難なアンサーを出すのが吉と見た。



「シュウかなー!? やっぱり仁星ってのが男っぽいよねー!?」



 シュウ。多分そんなに人気がないシュウ。格闘ゲームで一人だけプレイアブルにならなかったシュウ(ユリア除く)だ。故に、まさかこいつを嫌いになるなんて事はないだろう。そうたかをくくって返答したのだが、しかし。



「はーあ? 聖帝の敵じゃん! 汚物は消毒なんですけどー!?」



 残念! え? まさかのサウザー推しだったの? ならシュウはドブネズミの親玉的扱いじゃん。これはミスった。というかお前なんでサウザーやねん。無難にレイかシン推しとけや。



「謝って! 温もりを求めて孤独に十字陵建築してたサウザーに謝って!」


「えぇ? うん、ごめん……」



 一応謝っておくけど、なんか釈然としないなぁ。



「いいよ! ま、私の推しはジュウザだからいいんだけどね!」



 ジュウザかい!

 思ったよりも想定内の推しだった。というか待って。なら俺が謝った意味は……





 本日のQ&A


 Q.彼女と推しの趣味が合わないんですが。


 A.お互い尊重できればいいけど無理そうなら触れるな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る