家を出た日

あれ、あれ?

私何してたんだっけ。

そうだ、人間がきて、怖くて、なんか、いろいろあって、それで、屋根裏から落ちて、気を失ったんだ。

人間は、どうしてあんなに怖いんだろう。

やっぱり人間に近づいちゃいけなかったんだ。

もうここを出よう。


あ、人間。

えーと、何だっけ?あ、アロエだ。

横にいたのか。しっかり寝てる。

出るなら今の内かもしれない。

お、起きたりしないかな。

ゆーっくり、ゆっくり、布団から出よう。

いける、いけるはずだ。



「んん……?どこ行くの……?」


「ひゃあっ!!!」


人間、起きたのか!

私がふとんから出る音で起きたのか?


「ご、ごめん。驚かせちゃったね。もう動けるの?頭は大丈夫?痛くない?」


「べつに!驚いてなんか……。頭は大丈夫だ。 そんなことより!!私は、ちょっと、外の空気を吸いにいってくる!」


よし、いい言い訳だぞ、これは。

これなら怪しまれずに出ていけるぞ。


「大丈夫ならよかった。今日はまだ鍵閉めてないから玄関空いてるよ。夜は危ないからあんまり遠くに行かないようにね。」


「遠くに行ったりしないぞ。私は空気を吸いたいだけだからな!本当に!何もしないからな!大丈夫だぞ!アロエは寝とけばいい!」


「なんで僕の名前……。あ、話聞いてたんだね。」


「ああ。屋根裏にいれば聞こえる。」


「まあ、そうだよね。もしかして、急に屋根裏でドタバタしだしたのと関係あったりする?」


「あれは、ハトを見たせいだ。ちっちゃい鳥みたいなやつだと思ったのに、全然違った。本当に怖かった。」


「ハトは大柄だもんね。怖がらせてごめんね。」


「違う。人間だからだ。人間は怖いんだ。」


「……じゃあ、僕は?僕のことも怖い?」


「お前は、怖くない。あれ?少しも怖くない。お前本当に人間か?」


「人間だよ。人間、のはずだけど。ちょっと自信なくなってきちゃうな。僕が知らないだけで本当は人間じゃないのかもしれない。」


「まあいい。私は外の空気を吸ってくる。」


「あ、ごめんごめん。喋っちゃったね。何かあったらすぐ呼んでね。」


「ああ。」


アロエは、いいやつだな。怖くないし。

美味しいご飯もくれるし。いいやつだ。

でもしかたない。しかたないんだ。

人間は怖い。

ハトだってまたここにやってくるだろうし。

アロエが怖くないのも今だけかもしれない。

森の方が安全なんだ。



「……じゃあな、アロエ。」

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