友達が来た日

人間の家に来てからもう八回も朝が来た。雨が降ったり止んだりしていて中々森に帰れない。


そういえば今日は別の人間が家に来るらしい。


人間のやつに、屋根裏部屋に隠れとけって言われた。薄暗い所だ。


あいつの仲間なら危なくなさそうだけどな。


一応従ってやることにした。


それに、人間に見られるのはあんまり良くないし。なんとなくだけど。



「これから家に入ってくるからね。そんなに長くはかからないだろうから、友達が帰るまで静かにしててね。」



屋根裏部屋の床ごしに人間が喋ってる。


友達って何なんだろう。


別の人間の名前だろうな。



「静かにしてたら肉くれるんだよな?」



「そうだよ。静かにしてくれたらお肉あげるよ。魚もあげる」



「わかった。がんばってやろう。」



「ありがとう。じゃあ、また後でね。」



「ああ。」



人間の巣の入口を誰かが叩いてる。

別の人間だな。



「よう。アロエ。やっと雨が止んだから来れたぜ。」



アロエ?人間の名前か?


別の人間は、ここの人間より低い声してるな。



「久しぶり。今年は雨長かったね。ハトは大丈夫だった?」



ハト?人間、ハト飼ってるのか?



「俺は大丈夫だよ。でも、村には雷に打たれたやつが一人いたな。」



別の人間の名前なのか?


人間なのにハトなのか?


友達って名前じゃなかったのか。



「そっか。じゃあ帰りに追加の傷薬渡すよ。」



「話が早くて助かる。」



ハトって一体どんなやつなんだ?


ハトみたいに小さいのか?気になるな。


どっか床の隙間から見えないかな。


静かに探そう。



「あ、今日、ハトの好きなクッキー焼いてるよ。ちょっとオーブンから出してくるからテーブルで待ってて。」



どこも穴が小さすぎて見えないな。



「おお。茶でも淹れておこうか?」



「あ、おねがい。お湯はもう沸かしてあるよ。」



あ、ちょっと大きい穴があった。


やっと見れるな。




ッ!!!人間!!人間だ!!!


何だこの人間!!


私の体が嫌がってる!!!


感じたことない感覚!!!


気持ち悪い!!怖い!!!毛が逆立つ!!


じっとしてられない!!!


落ち着かない!落ち着かない!落ち着かない落ち着かない!落ち着かない!!落ち着かない!!!!


ああ!!体が勝手に人間の形になる!!


どこかに隠れたい!!穴に入りたい!!



「なあ、屋根裏に何かいるのか?」



早く落ち着かないと!!


隠れられる場所!!物!!!


あ!棚の上に桶がある!!あの桶なら入れそう!!



「い、いや、最近ねずみがいるみたいでさ。いつもは昼間出てこないんだけどね。クッキーの匂いにつられて来ちゃったのかな?」



「ネズミか?この音。もっと大きい生き物じゃないか?」



届け届け届け!!


桶を取って早く隠れて落ち着かないと!!



「ひゃっ!」



落ちる!!



「おいおいおいおい、これは絶対にネズミじゃないぞ。アロエはそこにいろ。俺が見てくる。」



痛ッッッッ!!!


大きな音立てちゃった!!どうしよう!


早く隠れなきゃ!!



「ね、猫とか、タヌキじゃない?どっか行くかもしれないしもうちょっと様子見ようよ。」



あ!何かに髪の毛が引っかかってる!!


早く取らなきゃ!取らなきゃ!!



「屋根裏の床蓋があんなに動いてるのにか?!どう考えても小動物じゃないぞ?!」



「さ、最近の小動物は大きいかもしんないよ?!」



「それは小動物じゃないだろ!」



あ。開いちゃった。


落ちる!!



「ぎゃっ!!!」



目の前が一瞬真っ白になった。



「女の子?!アロエ!どういうことだ?!」



痛い……痛い痛い痛い……。



「あ、えーと、女の子家に匿っててさ。人攫いだと思われたらまずいから隠してたんだよね。……本当だよ?」



ああ、意識が遠のいてく──

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