第2話

 …もう、どれくらい歩いただろうか。あれから、かなりの距離を進んだ気がする。横を通り過ぎる人が皆、あからさまに私を避ける。多分私の話は、平民の間でも広まっているほどに有名なのだろう。私に関わると、本当にろくなことにならないと。

 私は路肩の隅に腰を下ろした。食べ物も飲み物も持ち合わせていない上、来ている服ももうボロボロだ。…もう、疲れた。そんな時だった。


「あの、大丈夫?」


 ふと、俯いていた顔をあげる。声の主は男性で、歳は同じくらいだろうか?


「…だ、大丈夫ですよ…」


 この人はきっと、私の事を知らないのだろう。私に関わると、ろくなことにならないのに。


「全然大丈夫そうには見えないんだけど…何があったの?」


 この人の気持ちは嬉しいけれど、だからこそ私が関わるわけにはいけない。この人の人生に、何を起こしてしまうかわからないのだから。


「…あまり、私に関わらない方がいいですよ…」


「?」


「私、疫病の女神ですから…」


 自分から告白するメリットなんて何もないのに、気付いたら口が勝手に動いていた。けれど、これで良い。こう言う優しい人こそ、巻き込むわけには…

 ってあれ??


「き、君が噂の!!」


 私の思いとは裏腹に、男性は目を輝かせてこちらを見ている。


「俺はレクサ!君を探していたんだ!!」


「はい??」


 な、何を言っているのかわからない。私は疫病の女神。関わる人間が皆不幸になるんだよ?きっとあなただって…


「うーん、信じられないって顔なだなぁ…」


 まあ、信じられない。体目当てにしたってもっとまともな女性はいるだろうに。

 そうするとレクサは、少し自分の話を始めた。


「自慢じゃないけど、僕は今まで失敗という失敗をした事がない。田畑の開田にしても、事業にしてもね。だけどそれを言うと、みーんな例外無く、運が良かっただけって言うんだよ。絶対に違うのに!」


「はあ」


「そこで、君の出番なんだ!君と一緒に何かに挑戦してそれが成功したら、それはいよいよ僕らの実力ってことじゃないか!なんなら、疫病神だなんて君のレッテルも吹っ飛ばせるよ!!」


「はあ」


 つまりこの人、スーパーポジティブ人間らしい。おめでたすぎるよ全く。


「…そんなの無理だと思いますよ?私だって信じたくないけれど、私の力、本物みたいだし…」


それが、私の正直な気持ちだった。


「それで、終わらせて良いの?」


「?」


「君を不要だと放り投げた連中に、こう…やり返したいとかはないの!?」


「それは…」


 そんな事ができるのなら、やってやりたい、けど…


「ちょっとは、俺を信じてよ!!」


 この出会いが、私にとって運命に出会いだった。

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