疫病神の私でも、愛してくれますか?
大舟
第1話
「全く…何でこんなこともできないんだ、お前は…」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「もういい。この事は義父様にも報告させてもらう。文句はないな」
「…」
ウリア公爵はそう言うと、乱暴に扉を開け、出ていった。部屋全体を、重い沈黙が包む。…私は、どうすればいいんだろう…
公爵が私に婚約を持ちかけて来た目的は、間違いなく女神の加護の力が目的であった。私の家系の女には代々、さまざまな女神の加護が与えられて来た。ある者には豊穣の女神の加護が、ある者には戦の女神の加護が与えられた。
しかし私に与えられたのは、疫病の女神の加護であった。この加護は文字通り、何をやってもうまくいかないばかりか、周囲の人間まで巻き込んで不幸にする加護だ。この力ゆえに、私は両親からも疎まれて育って来た。一方で私の妹のウルテミスには守護の女神の加護が与えられ、皆から重宝されていた。本当に、私とは正反対であった。
ある日の昼、私は家のある部屋に呼ばれた。部屋を訪れるとすでに、公爵、私の両親、ウルテミスが座っていた。私の到着を見て、公爵が口を開く。
「…結論だけ言う。私はウルテミスと婚約することにした」
「!?」
そ、そんな急に…しかもよりにもよって、妹とだなんて…
絶句する私をよそに、ウルテミスが口を開く。
「公爵様の妻となれるなんて、本当に嬉しいですわ。私の全てを、あなたに捧げます」
「うん、ありがとう。君には期待しているよ」
…言葉が出ない。私の目の前で、一体何が起きていると言うのか…?そんな私を見かねてか、公爵が私に言葉を投げた。
「…君を信じた私が愚かだった。疫病神などと言われているが、もしかしたら何か別の力を持ってるんじゃないかと、期待してみたんだが…無駄な時間だったよ」
もはや、反論する気力も、謝る気力もない。私はただただ、成り行きを見守るしかなかった。
「お義父様、私はウルテミス様と婚約したく思いますが、構いませんね?」
「はい!!もちろんでございます!!まだまだ至らぬ点も多い娘でございますが、ぜひ公爵様の手で立派な女にしてやって下さい!!」
「私からも、心からお願いいたします!」
父も母も、心の底から嬉しそうだ。公爵家と関係を持てる事が、そんなに嬉しいのか。
公爵はウルテミスを連れて部屋を後にした。部屋には私と両親が残される。早速父が、私に苦言を呈する
「全く…どこまで私たちを不幸にさせれば気がすむんだお前は…」
父に続き、母も口を開く。
「…お願いだから、出ていってくれない?あなたと一緒にいるだけで死んでしまいそうな気さえするもの…」
もう、涙も出なかった。
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