下山・ニ

鬼と別れ街を目指して歩き続けること3日目

当時見つからないようにと相当に深い所まで進み続けた山は10年の時を経てかなりの変貌を遂げていた。

結果、俺は今街への方向を見失っている。と言うのも


《キシャー》

「またか!?」

【仙気流・連気手刀受け】から【仙気流・塵風気脚回し蹴り】上からの奇襲による虫型の化け物共の攻撃を手刀の構えで受け流し、風をも巻き上げる高速の3回転蹴りで一気に10体もの化け物を吹き飛ばす。


昨日ぐらいから急に虫の化け物が襲って来るようになった、魔力を感知出来るようになった俺だがこいつ等は魔力を隠し、周囲に溶け込んで俺を襲う。

朝も夜も構わず襲ってくるので、まともな休憩が取れず、しかも戦闘の度に方向を見失う。

正直一気に駆け抜けたい気分だが、何処に潜んでいるかわからない化け物が気になりそれも出来ない。急いては事を仕損じるのだ。

だがこのままではジリ貧になるのも事実。

どうしようか迷っていると近くで争っている声が聞こえてきた


俺はその声の主の所へ急ぐと、そこにはいろんな武器や防具を身にまとった人達が虫型の化け物共と戦っている所だった




「皆、もう一息だ!あと少しで勝てるぞ」

「リーダー、準備出来たよ」

「よし、前衛離れろ!」

「いっくよー、炎よ吹き荒れろ[クリムゾンフレア]」


《キシャー》《ギチギチ》《グシャ〜》「熱っちゃあぁぁぁ」


ええ、久しぶりの人に感動して避けそびれて巻き込まれましたよ。あれが魔法ってやつなんですね。

除き見してた木の陰から虫の化け物と戦っていた10人の人達の前に飛び出す。ちなみにダンジョンコアは木の陰のとこに置いたままだ


「え⁉何でここにオーガが⁉」

「何!?でも角がないし今人語を話していた?まさか上位変異種か!?」

「皆!落ち着け!オーガなら魔法に弱い。後衛は魔法の準備!前衛はオーガを取り囲み波状攻撃で時間を稼げ」


虫型の化け物を駆逐した連中はなぜか次に俺を標的に定めた

「えぇ!?ちょっと待てオーガって何?俺はにんげ…「食らえぇ」」


連中は俺の事をオーガというものと勘違いしているように思えた

話も聞いてくれないしまずは落ち着かせるのが先決に思う


俺は前衛の戦士4人に囲まれ波状攻撃を躱しながら機を伺う


「クソ、こいつ素早いぞ」

「あの…話をきいて…」


「当たらない!?この変異種スピード型か!?」

「すいません…少し話を…」


「大丈夫だ!時間さえ稼げば後衛組がなんとかしてくれる」

「俺、人、間、なんですが…」


「しかし俺達4人掛かりでかすりもしないとはなんて奴だ…」

「ちょっと、落ち着い、て、ください…」


斧にロングソード、刀にハンマーとそれぞれの得物を好き勝手に俺に振るう人達

闘気纏を使わなくても躱せるレベルだが俺の話を一切聞く気がなく少し煩わしい


「前衛離れろ!」

リーダーらしき人の合図の元、後衛の人達から魔法が放たれる

「「「「クリムゾンフレア」」」」

魔法使いらしき4人から一斉に放たれた先程と同じ魔法は威力がケタ違いに思えた

あれは直撃するのはマズい

急ぎその場を離れようとするが、俺の足を土の塊が覆い、いつの間にか足を拘束されていた

「ようやく捉えたぞ」

なんかリーダーっぽい人がドヤってる


ちくしょう【仙気流・闘魔きま…】

ドゴンとまるで大砲でもはなったかの様な轟音と巨大な火柱が立ち昇り辺りを業火が焼き尽くす




「やったか?!」

「並のオーガなら3回は倒せる威力だぜ」

「連戦でもう魔力が残ってないよ〜」

「あいつ最後まで自分は人間とか言ってたわね」


俺はギリギリの闘魔気纏でダメージを最小限に抑える事に成功、すぐさま火傷が修復されていく

「…………流石に怒って良いよね?」

「何!?まだ生きているのか?!」

「だが奴も手負いのはず!トドメをさせ!」


一張羅であるイノシシ皮の腰蓑も丸焦げにされた俺はトドメをささんとする先程の前衛4人を相手にする事を決め、拘束されていた足を土の塊から抜け出す

長年連れ添った大事な物を燃やされた恨み!

てか山で火ばっかり使ってんじゃねえ!


「うおぉぉぉ[斧技・地衝割]」

【手刀流し】【水月掌打】

大振りの斧の一撃を手刀の構えからの受け流しでいなし、防具の上から鳩尾に向けて掌打を放つ。

流石に殺すつもりはないからちょっと眠ってもらうだけだ

「ぐぼがはぁっ!?」「な⁉ヤマトー!このヤロウ!」

気も発動してないし、威力も抑えてあるから大丈夫なはずだ

【白刃流し】【空破連脚】

刀で攻撃してきたやつには白刃流しで刀を強く弾き体制を崩させ下段、中段、上段と流れるような連続蹴りで意識を奪う


「この変異種、格闘家みたいな技を使うぞ!」

「人語を話し人間の技を使うとは小癪な!」

残るハンマー使いとロングソード使いは同時に攻撃してきた。角がなく、人間の言葉を話して人間の技を使う……それって人間じゃないの?

何で俺オーガってのに間違われるの?


「[爆砕衝破][雷光斬り]」

前後からの挟み撃ち攻撃を仕掛けるハンマーとロングソードの攻撃を跳躍することで回避、ハンマー使いの背後に着地し背中に蹴りを叩き込む。【前蹴り】勢いよく蹴られたハンマー使いはロングソード使いにぶつかり、仲良く吹き飛んでいった。


「うおぉ!!」「[ハンティングショット][ファイヤーボール]」

俺の背後からリーダーっぽい人がショートソードと盾を構えて突っ込んでくる

リーダーっぽい人の後ろからは弓矢と小さな魔法も跳んでくる


………【仙気流・連気拳】飛んでくる弓矢と魔法を撃ち落とし【仙気流・白刃手刀受け】リーダーっぽい人の振るうショートソードを交差した腕で挟み込み受け止め【仙気流・白刃折り】ショートソードを更に短く折る。更に【仙気流・剛掌打】盾にも気を込めた掌打を叩き込み、盾をも破壊する。後ずさりするリーダーっぽい人の足を引っ掛け倒し、馬乗りになりそのまま驚いた表情の顔面に往復ビンタを叩き込む

「俺、は、人、間、オー、ガじゃ、ない、分かった?」


「す、すぴましぇん」

顔を腫らしたリーダーっぽい人が謝り誤解は無事解けたみたいだ。

……この人に対して個人的な感情が入っているのは気の所為だ。










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