山生活9年目
俺は修行をやり直していた。
あの洞窟での事実上の敗北から1年、反省点を見直し改良を重ねついに俺は仙人への道を落ちきり、仙人を極めることに成功した。
ついては早く仙人になる為の〈わし〉から〈俺〉への自称の変更をここに記しておく。
山に籠もり約10年。最初は只の自暴自棄気味だった俺の目的も、時が経つにつれ現実味を帯びていき、もうこの場所で出来る事はない程にまでになっていた。
「じゃぁ、行ってくるよタマ」
《ギギ、イママデアリガトウ》
「気をつけてなポチ」
《ギッ、ゴシュジンイナクナルサミシイ》
「まぁ、たまには顔を出すさ。二人共元気でな」
俺は10年近くいた拠点を離れ洞窟へのリベンジを果たす。生きて戻っても拠点には帰らない事を二人には伝えてある。
「ピーちゃんにもよろしく言っといてくれな」
《ギギ、コトバツウジナイカラソレハムヅカシイ。ケドワカッタ》
この二人にもずいぶんと助けられた。話す相手がいると言うのはそれだけでも心を軽くしてくれるものだ。
俺は拠点の全てをこの二人にあげ、ついに下山することを決めたのだ。
しかし、まずは洞窟へのリベンジを果たすことが大前提となる。
彼処を超える事で俺は自分が欲しかった物が手に入るという直感があったのだ。気のコントロールを修行して以来、こうゆう直感力もかなり鍛えられている。
「いくか」
俺は拠点を後にした。
洞窟に辿り着いた俺は化け物共を蹴散らし奥へと進む。
《グオオォォォーッ》
「嬉しい再会だな。まさか復活しているとは」
そこには1年前に倒したはずの巨人がそのままの姿で復活していた。
既に不可思議な事はあの地震の時から数多く起きている。今更化け物が復活したところで何も思わない。むしろ、
「あの時のリベンジだ。俺は勝ったなんて思ってねぇからな」
俺は新たな技を発動する、今までは攻撃特化の獅子の気や防御特化の亀の気をいちいち発動していた。前回は一瞬ではあるが、技と技との繋ぎ目で自らピンチに陥っていた。強者と渡り合うにはその一瞬がまさに命取りになってしまう。
だから俺は考えた、だったら全部まとめて発動してしまえば良いと。けど、用途の違う気を一つにまとめるのは至難の技で、実用出来るようになるのに1年もかかってしまった。
【仙気流・闘気纏】
獅子の気、竜の気、亀の気、炎鳥の気を同時に発動するこの技。
体力の消耗は激しくなるが、同時に発動させることにより今までにないほどの力を生み出す。
《グオオッオオッ》
巨人は俺の気に当てられたのか、焦りまじりに攻撃を仕掛けてくる。前回同様石礫の散弾だ、だが今の俺にそれは児戯にも等しい。
「おおおおぉぉぉー」
俺は石礫の散弾に自ら突っ込んでいく、強化された体で高速で移動し石礫を躱す、躱しきれない石礫は身体に当たりそこそこのダメージを受けてしまうがすぐさま回復が始まる。これが俺の新しい戦闘スタイル。
そして跳躍、巨人の頭に狙いを定める。
《グオオーッ》
巨人も狙いがわかったのか跳んでくる俺に狙いを定め斧を構え振りかぶる。
下手に跳べば空中の俺は、敵にとって格好の的だろう。しかし、
《ガァァァァッ》
狙いすまされた斧によるフルスイングの攻撃は呆気なく躱される
【仙気流・空気跳び】
高速で蹴り出される一歩は空を蹴り、さらなる飛躍を可能とする
もう、空中で身動きの取れなかったあの時の俺ではない
そして、【仙気流・真・剛気拳】巨人の頭部へ放つ正に空手の基本である何千万回と打ち込んできた正拳突き。だが俺の正拳突きは気の塊を近距離で叩き込み気の奔流で相手の中身を爆裂させる正に必殺技。
《グビョッ!?》
頭部を爆散させられた巨人はゆっくりと後ろに倒れる。
着地し残心をとる。巨人は倒したはずだが沸き上がるあの力はやってこない。もうこのぐらいの敵では自分を鍛える事は不可能な程俺は練磨しているのだろう。
《ォォオー》
洞窟の奥から俺を呼ぶ声がする。
「待たせたな」
1年待たせてしまった。あの時の恨み今こそ晴らす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます