街生活9年後



あの人類最悪の日から今日で丁度5年が経った。

世界を丸ごと襲った地震は不思議な事に、建物等への被害はなく、津波等が起こることも無かった。ダンジョンが現れる周辺だけがなんらかの影響を受けただけに留まった。

世界各地に現れたダンジョンに各国の代表達は調査団を派遣した。

結果は惨敗。ダンジョンの中には化け物達が蠢いており、人類が持つ知恵と叡智の結晶である武器や兵器の数々は、化け物達には効果が限りなく薄く調査団は只々数を減らすばかりであった。それでも調査団の派遣を止めないのは、ダンジョンに眠る豊富な資源にあった。生き残った調査団が持ち帰る未知の資源に、各国は沸きさらなるダンジョンの攻略に力を注ぐ事になる。


一方であの日から各地で力を持つ人達が出始める。それは例えば超能力者と言われる者達であったり、ゴーストバスターやエクソシストに霊能者など、各国の所謂オカルトと言われる分野の人達が急激に力を持つようになった。

それは純粋な力であったり、今までは見えなかった不可思議な現象の数々が具現化され、目に見えるようになったのだ。

しかも、その力がダンジョンの化け物達にかなり有効だと言うことがわかり、その人達をダンジョンへと投入することで各国のダンジョン攻略はますます勢いづくことになった。



それ以外にもあの日以降人類には魔法を使う者達も現れた。

それまで、なんの力も持たない一般人が急に魔法やスキルと呼ばれる物を使えるようになったのだ。

これらの現象を引き起こした原因をとある科学者が分析、解明した。

それは今までとは異なる未知なるエネルギーが地球上に蔓延していること、そしてそのエネルギーに適合した者達が力を付けたというものだった


その科学者は地球上に蔓延するその未知なるエネルギーを〈魔素〉と呼びまた、各地のダンジョンの化け物が大量の魔素から構成されている事から化け物達を総じて〈魔物〉と呼ぶようになった。


かくして世界はたった5年で大きく変わっていった。昨日までの強者が弱者に、先程までの弱者が強者に生まれ変わり世界に適合する者としない者とで格差が生まれるようになった。そして人類というものは、いや、人間という生き物はいつの時代でも醜く、残忍な生き物であり、法も秩序も失った世界は只々強い者が弱者を食いものにするある意味では正しいかもしれない世界へと変わった。


しかしそんな世界も長くは続かなかった。【ダンジョン】である。

攻略を続けていた各国だが当然世界中のダンジョンを把握しているわけではなく、まだ発見されていないダンジョンも数多く残っていた。

そしてそれは突如として人類へと牙を向く。ダンジョンからおびただしい数の魔物達が地上へと溢れ出したのだ。

世界は安心していた。ダンジョンからは魔物は出ないと。

そんな保証等何処にもないのに目に見えない安心を信頼していた。


結果突如として溢れ出した魔物達に人類は大打撃を受けてしまう。

強者だ弱者だと言ってる場合ではなくなり、魔物は人類共通の敵へと変貌を遂げた。


各国はダンジョンから溢れ出す魔物、通称〈スタンピード〉の対策の為、手を取り合い一つの組織を立ち上げる。〈冒険者ギルド〉である。

冒険者ギルドではまだ見ぬダンジョンの探索から今あるダンジョンの攻略、調査等ダンジョンに関する仕事を各国から引き受け運営する。

所属するのは18歳以上であれば腕に自信があれば誰でもなれる。


そして冒険者ギルドが調査し出した結論は、ダンジョンとは魔素が特別濃い場所であり、今ある地球とは相違がズレているということ。また魔物はそのダンジョンで生まれ続けるということ。そしてその魔物を減らさなければダンジョンはいつかまたスタンピードを起こすということ。


それらは世界中の人々へと報告され、ここから人類とダンジョンとの本当の戦いが始まっていく。








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