山生活7年目


朝起きてまずは顔を洗う。水源は身体を拘束されている緑の獣だ。やつは頭を軽く叩くと水を出してくれる。いつだったか緑の獣の中に水やら火やらを飛ばしてくる奴がいて、こりゃ便利だと捕まえたのだ。もちろん相手も生物である以上持ちつ持たれつの関係が望ましいと思うので畑で取れた野菜や獲物の肉などをエサとして与えている。


外に出たらこれまた軽く頭を叩く事で出る火を使って竈で朝食を作る。

朝のメニューは畑の野菜と昨日襲ってきた二足歩行の豚の化け物の足だ。

豚の化け物は緑の獣なんかより断然強く、クマ2匹と同等の力があるように思えた。


しかしわしも日々の修行で培われた力によってこれを撃破、前に襲ってきた緑の親分よりは弱かったので楽に闘えた。

なのでこうして朝食の一品として並んでいる。豚の見た目だけになかなか美味しく緑の獣なんかとは全然違ったので、襲って来る日は喜んで討伐し日々のメニューに組み込まれている。


朝食を済ませたら溜池から畑に水を蒔き火と水をくれたペットにエサを与えてから日課の巻藁10万回をサクッと3時間程で終わらせ森の見回りに向かう


近頃また化け物共が増えて来たように思う。

少し前には緑の獣が100匹単位で襲ってきた

何やら森に異変が起きているようなので周囲を警戒している


こんなときは気配察知の技が役に立つ。

化け物達が闊歩する前には特に必要のない技であったが、今では捜索に役立つ非常に有用な技となっている。

というのも、彼ら?彼女ら?のような化け物共は揃ってみな気のようなものを纏っている、わしはそれを探知することで奴らより一早くその姿を発見できるようになった。

奴らを素早く発見し即撃破を繰り返し、家を中心にぐるりと森を一周する。


今日だけでも緑の獣が30匹に豚の化け物を5匹見つけた、此奴らが一体どこから現れているのか、時期を見て暴かねばなるまい。


家に帰って来たら昼食にする。メニューはこれまた先程狩った豚の化け物の足と水辺で見つけた透明になれる大きなトカゲ。これを調理する。

ナイフ等は既にないが手刀に気を纏わせることで鋭利に切断、カットする。

火加減は火担当のペットが上手くやるだろう。適当な木にぶっ刺し竈の上に並べれば後は放置で出来る。


ペットと一緒に昼食を終えると座禅を組み瞑想する。心を鎮め全身に気を纏わせそれを循環させる。これにより気の発動がよりスムーズになる。

そして技をさらに昇華させるべくイメージしさらに磨く。


終わったら次に技の鍛錬。

全身に気を纏わせる事で身体能力が向上する【獅子の気】を発動させながら次々に技を繰り出し鍛錬する。


《ブオォォォーーッ》



鍛錬が終わる頃に豚の化け物の親玉らしき奴が現れた。奴は前見た緑の獣の親分より更に大きく3mはあろう体躯で手にはその辺から引っこ抜いたであろう大木を持っていた。


久しぶりの大物にわしは少し歓喜する。いつから闘う事が好きになってしまったのか、昂ぶる心を鎮めまだまだ心が弱いなと一人ごちる。


《ブオッッ》

奴は素早い動きでわしに接近しその大木でわしを薙ぎ払おうとする、わしは受ける事は危険と判断し後ろへ跳躍、距離を取る。

【気拳】かつて最初に覚えたこの技は今では【獅子の気】の効果も相まって、まるで弾丸のようにわしの拳を具現化し飛んでいく。しかしそんなものは効かんとばかりに奴は避ける素振りすら見せず、また実際腹に当たったがまるで効いてないようであった。豚の化け物共には充分通用するのだが…


なれば【気拳・連】わしは気拳を高速で何度も打ち出す。危機を察した奴が大木を盾にするが徐々に砕かれていき、奴が持つ大木の盾を粉砕した瞬間わしは一瞬で奴の懐に入り込む【気拳・剛】射程距離は短いが当たれば大岩であろうと一撃で破壊する大技だ。

だが、確実に当てたはずのわしの拳はやつの腹に無残にも吸収され動揺するわしの隙を見逃さず奴はその巨大な腕を大きく振るった

《ブオァァァァァッッッ》


地を抉りながら何度も転がり続け勢いよく木にぶつかりようやくわしの体は止まった。


…ぬかった。油断したつもりはなかったが、まさかあの技が効かないとは思わなかった。あの威力のパンチをくらってバラバラにならなかったのは日々の修行の賜物だろう。しかしながら全身が軋み骨もいくつか折れている。奴は真っ直ぐにこちらを睨みながら走ってくる。


こんなときは【炎鳥の気・回】全身に纏わせている気を回復させるほうに向かわせる。全身を高速で循環する回復目的の気は細胞を大きく活性化させ、自らの自己修復機能を大幅に向上させる。

それにより体から蒸気のように煙が吹き出し、わずか5秒程で動ける迄に回復させる。


《ブゥアァーッ》


その間に奴は既に目の前に迫っていた

【気旋・回し受け】再度迫りくる凶悪なパンチを今度は気のコントロールとともに回し受けで受け流す。

好機。回し受けの流れのまま再び奴の懐に潜り込んだわしは【気脚三日月蹴り】でやつの膝を側面から攻撃し体制を崩す。

そして上へ跳躍し【獅子の気・炎王】筋力が一瞬だけ爆発的に増大し右手には燃え盛る炎が立ち昇るこの技。そして【真・炎王手刀顔面打ち】


だが、奴は反応を見せ顔を両手でガードした


結果、わしの手刀は奴の両の手を切断するだけに留まった。


が、わしの体はまだ跳躍による上昇途中。自らの腕を切り飛ばされた事による一瞬の隙、今度はわしが見逃さない。

そのまま奴の頭上まで跳躍したわしは一瞬呆けている奴の頭から


「おおおおぉぉぉーっ」


【竜の気・飛燕四本ねじり貫手】返す刀といわんばかりの左手での貫手を放つ

《ブギョッ》

勢いよく貫かれた頭部に奴は潰された豚のような悲鳴をあげゆっくりと地面へと倒れた。

ブワッと今までにないほど力が溢れてくる。

まるで数段飛ばしで仙人への道を転がり落ちたかのようだ。




家と畑を無事守りきりペットもこころなしか喜んでいるように見える。

わしは最後に見回りの際に半殺し状態で置いていた緑の獣に回復の気を送り込む

…まだまだ無理か。

充分に回復できずついには事切れた獣と先程退治した豚の親玉をトイレ用に開けた穴にいつの間にか住み着いたアメーバ状の化け物の所に放り込み

今日が終わる。


今回の反省点は攻撃特化の技に対して防御面が薄過ぎるように思える。今度からは次なる強敵に備えて防御の技も修行に取り込むことにする。


良かった点はたまにしていた大声の修行のおかげで声が裏返る事が無かったことだろうか。

やはり日々の修行はわしを裏切らない。


晩飯を食いペットにエサを与えてわしの一日が終わる



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