第2話

あれから半年が経過した。

それにしても半年という時間経過は成熟した大人にとっては大した時間ではないが、産まれたばかりの赤ちゃんにとっては違うようだ。

(まあそれでも視界がクリアになっただけで大して変わらないと言えば変わらないけどね)

そんなことを思案していながら相変わらず天井を眺めていると、突然見知らぬ幼女の顔が視界に映った。

(この子、誰なんだろう?)

そんなことを思っていると常駐していた乳母が駆け寄ってくる。

「まあイリーネ様ったらこんなところに登ったら危ないですよ」

「ごめんなさい。妹が産まれたって聞いたから顔を見に来たの」

そうしょんぼりとイリーネと呼ばれた少女は答える。

乳母とイリーネという幼女の会話から分かったことはこの綺麗な赤髪と私と同じ紫色の瞳を持つ異母姉だと言うこと。ちなみに彼女の赤髪は母親からの遺伝らしい。格好は皇女が着ているとは思えない質素な白いワンピースを身に纏っているが、清潔感があって彼女にとても似合っていると思う。噂通り衣食住は保証されているようだ。

(いくら跡継ぎではない女児だからって一応皇女だし他国に嫁がせるつもりなら劣悪な環境で育てるわけないか…。)

それでも赤ちゃんである私が着させられているシルク製のベビー服の方がいいと言うのはいかがなものだろうか?

(赤ちゃんの私ではなく姉たちに着せてあげなよ)

と内心そう思って声を出そうとするが、うーやあーなどの喃語しか出てこない。

しかし乳母と姉を気づかせるには役立ったらしく2人揃ってこちらを向く。

「あらあら、どうされたんですか?皇女様」

「ねえ、そう言えばこの子って名前はなんて言うの?」

「あ!そうですね。失念しておりました。妹君の名前はウィステリア様というのですよ」

「ウィステリア…」

乳母に教えてもらった私の名前を繰り返し、何かを思いついたみたいに顔を輝かせた。

「この子の愛称は何にしようかな。ウィス?それともリアがいいかな。うーん、女の子だしリアの方がいいかも」

そう独り言を言いながら思案する姉をじっと見つめているとどうやら私の愛称が決まったようで、私の方に向き直って可愛らしくお辞儀をしてみせた。

「私の名前はイリーネ・トワイライト。貴女のお姉ちゃんよ。これからよろしくね。リア」

それが、私とイリーネ姉さまとの出会いだった。

(というかこの国の名前ってトワイライト皇国だったんだ。)

と一人納得していた。


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転生皇女は女帝になんてなりたくないっ! 結咲さくら @ichico_love

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