転生皇女は女帝になんてなりたくないっ!
結咲さくら
第1話
(…ここ、どこだろう?)
産まれたばかりだからか、ぼんやりした視界のなかそんなことを考える。
赤ちゃんボディーだからか寝返りを打つこともできないため天井と世話をしてくれる乳母の顔しか見たことがないが、ぼやけているため乳母の顔すらも認識出来ているのかは怪しいところだ。
この乳母は私が泣き始めると優しく抱きあげてくれて安心させてくれる存在であり、唯一の味方と言っても過言でもない。
何故ならこのトワイライト皇国では男児だけしか皇位継承権が与えられず、女児が産まれた際には適当に名前と一通りの衣食住を与えるのみで、人として大切な愛情は与えられることはないらしい。
ウィステリア。
このウィステリアという名前は皇族直系の証である紫色の瞳とまだ産毛だが紫色の髪を持っているからという理由らしい。この色彩は皇族と言えど滅多に発現することがないらしく確かこの皇国を建国した皇帝もこの色彩を持っていたようだが、産まれたのが継承権がない女児だったこともあり、他の姉妹たちのような扱いを受けざる得なかった。その扱いとはある一定の年齢になったら他の国の権力者の妻として嫁ぐというもの。まあ皇帝の娘が他国に嫁いで国同士の友好関係を保つなんてことは当たり前だが、問題になったのは私が生まれ持ってしまったこの色彩である。この色彩は滅多に発現しないため他国に嫁がせるよりもこの皇国内で入婿を探して女帝にすべきだと言う意見が出てきたことがこの騒動の始まりだった。
そのため通常であれば与えられることはない皇位継承権や男児が産まれた場合のみ使用されるような豪華絢爛な部屋に常駐の乳母まで与えられることになった。
しかし、これも有りがちだが実母は産後の肥立ちが良くなかったようで、私を産み落としてから数日後にこの世を去ってしまった。父親である皇帝は私と同じ色彩の男児を妃たちに産ませるために忙しいようで一度も顔を合わせたことがない。
そのため私を愛してくれているのかすら分からない。
一見すると恵まれているような環境にも関わらず、心だけが満たされないでいる。確かにこの乳母は私を大切に育ててくれるがそれでも本当の親でなければ埋められないものもあるに違いない。
孤児として育ち、愛を知らぬうちに幕を閉じた前世のように。
(大体いくら特例で皇位継承権が与えられたり、始祖帝?って言う歴史上の人物と同じ目と髪の色だからってこんな赤ちゃんに重圧をかけるな‼︎)
と転生?産まれたばかりの私は心の中で叫ぶしかなかった。
こうして、次期女帝候補であり第2皇女であるウィステリア・トワイライトの人生が幕を開けたのだった。
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