第86話 ターゲットの証明

 ピンポーン

 ドアを開けると真菜がハアハア息を切らし立っていた。


「咲さん、エミリーちゃんと話が終わらなくて。ノンさん今、自願出てたでしょ。取りあえず部屋に入りましょう。」


自願とは自殺願望の事だ。真菜は部屋に入るとシャワーを浴びた。出ると俺の好きなウサギのミッフィーTシャツを着ている。


「ノンさん、次の3つから好きなのを選んで下さい。1、素の真菜とまったりエッチ。2、メイド風真菜と激しいエッチ。3、女子高生風の真菜と禁断のエッチ。さてどうしますか?」


「1の素の真菜で良いよ。そのミッフィーのTシャツ可愛いね。似合うよ。」


「フウー。全部ダメって言われたらどうしようかと思いました。」


1時間ほどじゃれ合い、事が終わった。真菜は三毛猫のサクラになり、ベッドに潜り込み、ゴロゴロと甘えている。咲はまだ帰って来ない。目を閉じると自然と眠りについていた。


****


翌日、咲の元気な声で起こされた。

「ノン、おはよう。昨日は帰りが遅くてごめんなさい。エミリーと話が尽きなくて。ノンに世界中の美少女達が集中してるって言ったら驚いててさ。悪いんだけど、今日タンポポを休んでくれない?ノンがターゲットの「N」だと言う事を証明したいの。特別な事はしないで良いから、ありのままのノンでいて。」


「良いけど、どうやって証明するの?」


「歩くの。今から家を出て、日本をレポートする様に歩くの。ノンの目と心の声を通して、世界中の美少女達を筆頭に、ポセイドンプロジェクトの参加者全てに届くから。それが「N」だと言う事の証しになるから。」


「わたしはノンさんの事を信じています。」


 咲と真菜は俺を見つめている。


「時間はどれくらいやるの?それと軍資金は?」


「時間は明後日の午後1時まで。軍資金はノンの持っているお金から二十万円出して。家には戻らないでどこかで宿を探してね。ギャンブル、風俗、飲み屋、何でも有りだから思う存分楽しんで来て。」


「風俗も有りなの?怒らない?」


「怒るよ!」


「だろうな。」


 俺は財布に二十万円詰め込み、リュックに下着を入れ、出る準備を終えた。


「それじゃ行くよ。」


 咲と真菜に軽くキスして家を出た。俺は移動にバスを使わず、歩いて地元の駅まで行く事にした。


 まず向かったのは神社だ。のど飴や、くず餅が有名だ。この神社の敷地に入ると、初めて来た幼い頃と同じ建物等が有りタイムスリップした感覚になる。賽銭箱に五円玉を投げ入れこの旅の安全を祈る。


 しかし二泊しかしないのに二十万円も何に使えと言うのだろう。確かにギャンブルや風俗に使えば、あっという間に溶けて無くなるだろう。俺は次に、川の土手沿いを歩き、この水門を渡った。この水門は古く、市の重要文化財に指定されている。毎週土曜日に行われているホームレスのパンの配給場所でもある。


 そして国道に出ると、競馬場に出る。今日は開催日で無い為、場外のみだ。

入場料は無料なので入ってみる。俺は競馬も競輪もやらない。馬券の買い方も知らない。観客は高齢者が多く若者は少ない。


「調子どうですか?」と声をかけると、

「うるせぇよ!!」と返事が返って来た。きっと負けが込んでるのだろう。


 競馬場を出て国道線を渡れば、風俗街に入る。日本有数の風俗街だ。せっかく来たのだから写真だけでも見てみよう。


(うぅ、駄目ですノンさん)

(真菜、シッ!)


 ボーイに案内され、カウンターに並べてある写真を見る。どれも美人揃いだ。しかし実物に会うと残念な結果になる事を俺は知っている。遊ばずに店を出て、しばし風俗街を歩く。


 朝ご飯を食べて無いので、お腹が空いて来た。


 歩いて行くとお寺がある。とても古いお寺だが、その由来などは知らない。お寺を素通りして駅に向かって行くと、咲とよく来る喫茶店がある。


 時間は午前十一時を少し過ぎた所だ。喫茶店のモーニングセットは十二時まで注文出来る。店に入りCモーニングでアイスコーヒーを注文した。以前はBモーニングだったがメニュー変更していて余り美味しく無く物足りない。


 俺は煙草を吹かし一息入れた。




☆☆


 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 あと4話で完結する予定です。

 引き続き応援よろしくお願いします。

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