第74話 真菜、三毛猫になる
「ニャン」
「ん?」
「ニャンニャン」
「マチルダか?」
朝になり目を開けると、三毛猫がゴロゴロ言いながら俺の顔を舐めている。「わっ!」とビックリしてベッドから飛び起きる俺。心臓がバクバクいっている。咲がソファーに座り、俺を見て微笑んでいる。
「この三毛猫、真菜なのか?」
「うん、この猫ちゃんに名前をつけてあげて。真菜と区別する為に。」
「名前か。日本猫らしく『桜』ってどう?カナ読みで『サクラ』でも良いし。」
「じゃあ決まりだね。三毛猫ちゃん、あなたの名前はサクラだよ。ノン、お腹空いたでしょ。あたしとサクラは朝食にカリカリ猫ご飯食べたから。今お餅焼いてあげるね。三個で良い?」
「ありがとう。お餅は三個で良いよ。真菜、否サクラは天の神様の啓示を受けられたの?」
「受けられたよ。操を守りノンと共にこの地球に真実の愛を広めなさいって。あたしと真菜がノン一人の男と付き合うのはお許しが出たよ。真菜の愛の深さに心酔したって。もうあたしも真菜もノンにしか抱かれない。ノンもあたしと真菜しか抱かない。それで良いんだよね。」
「そんな心配しなくても、俺なんかお金でも出さない限り抱いて欲しいなんて言う女いないよ。それにしてもサクラって可愛いな。」
俺はサクラを膝に乗せお餅を食べた。今日は何をしよう。サクラは風呂場の洗濯機の前に行き「フーッ、ニャン!!」と気合を入れると真菜に戻った。
「ノンさん、サクラって良い名ですね。わたしは受験勉強があるので今日は帰ります。初めて天の神様の啓示を受け、真菜は変わりました。寿命は短くなりましたが後悔はしません。これからもよろしくお願いします。」
「帰るのか。俺と咲は駅まで行くからそこまで一緒に行こう。」
「麻雀ですか?わたしも受験が終わったら連れていって下さい。必ず咲さんといい勝負出来る様になりますので。」
家を出て三人で、電車に乗り、駅に向かった。真菜と次に会うのは、大学受験が終わってからだろう。駅に着き、別れ際俺と咲が真菜とハグをして別れた。
俺は咲を連れ雀荘に向かった。店の前に着くと咲が「ん?」と立ち止まり、店に入らず歩き出した。咲と心の声の会話になる。
(咲、どうした?)
(あの例の美代子の気配がするの。美代子は麻雀業界では負け知らずだから、今あたしが対局して勝つと大騒ぎになる。美代子は心がピュアだから今の立ち位置で頑張れているの。あたしがそれに水を差すわけにはいかない。
ホームレス雀士とか、元風俗嬢とか揶揄され血を吐く思いでここまで来たんだ。もう少し夢を見させてあげよう。機が熟したら真菜を連れ、ノンも入り四人で卓を囲もう。ノーレートで何も賭けず打つのも良いね。)
(よく美代子がいるって分かるね。雀荘に行かないならどこ行く?)
(ノンが行ってるサウナに行きたい!)
(カプセルホテルは男性専用だから駄目だよ。ラブホテルならサウナ付きがあるけど。咲はサウナ入った事無いのか?)
(無い!サウナに入りたい!ラブホテルで良いよ。)
俺は携帯でサウナ付きラブホテルを探してそれを見つけた。今いるところから歩いて十五分の場所だ。
ホテルに着き部屋に入ると入口の奥にサウナ室が有る。見ると丁度二人入る広さだ。服を脱ぎ、いきなりサウナ室に入る咲。
五分サウナに入り、それから水風呂に入る。これを三回繰り返し最後に普通の風呂に入り上がる様に言った。
一緒にサウナに入ると、咲の身体は水滴で光輝いて見えた。なんて美しいのだろう。咲にもいずれ老いが来る。
俺はこのシーンを忘れない様に目に焼き付けた。
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