第9話 体の異変

「ノン、片づけ終わったよ。今日は何して遊ぶ?これ何?」


 咲の手には、携帯用のカード麻雀を持っている。俺が旅行などで持って行き、遊ぶ花札サイズの麻雀ゲームだ。咲は一度興味をもつと、自分が納得出来るまで俺を質問責めにする癖がある。


 作業所で俺が麻雀をして、ポンだのチーだの言っているのを、心の声で聞いていて興味を持ったらしい。テーブルの上にカードを広げると咲の目が輝いた。

 

「綺麗な絵が書いてあって、素敵だね。これの絵柄を揃えたり、数字を並べて役を作れば良いんだね。二人で出来るの?」


 俺は、「出来るよ。」と、応えカードを配りオープンの形で、お互いの手を見せながら対局を始めた。麻雀は、運と相手の捨て牌を見ながら役を作る頭脳戦だ。咲は、記憶力が良く数字にも強い。そして、人の心が読める。


 何局かやるとお互いのカードを見ないでやりたいと言い出した。俺は咲の異常とも思える負けず嫌いな性格を知っている。しかし俺にも意地がある。咲が俺のリーチをすり抜け当たり牌を捨てなくても、自分でツモれば良いのだ。


 俺の親で対局を始めると咲は六巡でリーチをかけてきた。咲の捨てた安全牌を俺が捨てると、元気に「ロン!」と言い勝ったと喜んでいる。フリテンと言うルールを教えチョンボで満貫払いだと言うと、笑顔で次の対局を始めたいと言った。


 時間は午後七時半。俺は自分の体の異変に気が付いた。手が震え、顔が引き攣るのだ。酒も飲まず、薬もまだ飲んでいない。禁断症状が出ていた。


 薬を飲む時間を午後八時と決めたのだが無理は良くない。今まで午後四時に酒を飲み、その直後に薬を飲むという生活を二年もしていたのだ。そのツケが来た。

 

 咲は俺を見て驚き、冷蔵庫に飛んでいき水を持って来た。俺は薬を飲むと、麻雀を中止してベッドに横たわった。


 部屋の灯りが消え、何かが隣に来た。マチルダだ。俺の脇の下に頭をこすり付け、「クークー」と鳴いている。

 

 目を閉じると深い眠りについていた。

 

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