今成すべきことは普段通りに過ごすこと









 その日の夜、晩酌を済ませ、一同が実家で寝泊まりした翌日。

 俺たちマネージャーは先に起きて準備をして、寝ている涼音たちに声を掛けて起こした。


 午後からはそれぞれ配信のスケジュールがある為に、ミライバへと戻ることに。

 ちなみに遠藤さんは案の定二日酔いとのことで記憶が無かった。


 海斗といえば、朝からなんだかほわほわとしていおり、ずっと『柔らかい……』と小さく連呼し続けていた。


何があったのかは、一切聞かなかった。


 それから実家へ来る時のメンバーで俺と海斗の車でミライバまで辿り着き、各楽屋へと向かい解散することに。


「お兄さんの実家久しぶりで楽しかったばい。それに涼音ちゃんの部屋、可愛かったとね〜」


「そ、そんなことない……。でも流石に四人で窮屈だったかな……」


「そんなことないけん。寧ろ合宿みたいで私は嬉しかったばい」


 楽屋に戻ってきてリラックスする涼音と旋梨ちゃんの会話を耳にする。

 そう、実のところ昨夜は涼音の部屋に旋梨ちゃんと恵果ちゃん、そして鳴海ちゃんの4人が一緒に寝たのだが、俺も窮屈すぎるのでは無いかと少し不安だった。


 しかしそうでもなかったと知り、安心だ。ちなみに俺は翔太くんと一緒に寝たのだが、真夜中に寝言で『ロックンロール!!!』と叫んだりされたので落ち着かなかった。


 海斗はあのまま遠藤さんと。八神さんはテーブル席のソファーで寝たそうだ。


まぁ俺としても、楽しかったと言う感想だ。


 それから俺はメールを確認する。すると瀬川さんから、午前10時からなら予定が空いているとのことで、時間を確認する。


 時計の針は9時15分を示しており、少し余裕があるようだった。

 


ーーそれから、予定の打ち合わせにて。



「素晴らしい案ですね、採用です!」


「……え“ッ」


「形上とはいえ視聴者を楽しませることのできる企画としては成り立ち、実際のところは宮田さんの心をへし折れる! まさに素晴らしいと思います、是非やりましょう!」


 たかが新人の提案、幾ら瀬川さんでも判断は厳しいものだろうと構えていた。

 しかし瀬川さんは俺の話を聞き終えると同時に親指でグッドポーズしながら許可した。


「いやいやいや、もうちょっと考えてもいいのでは? 流石に俺としてもなかなかに難しい提案ではあると思うんですが……」


「そんなの気にしてたらいつまで経っても事態は解決しません。ここは思い切りも必要、裏での口合わせなら任せてください! なので裕也さんはとことん宮田さんを追い込んでください!」


「ひえぇ……」


 なんだかハイテンションで決定する瀬川さんに俺は不振を抱きつつも、頷く。

 いや、まぁ……受け入れてくれるのはすごくありがたいことではあるが、こうもあっさりだとなんかな……。


「とはいえ、私は裕也さんから宮田さんを潰すと宣言された時から、なにかしらの策は立てるはずと見込んでいました。なので心配せずとも、私は協力するつもりでした。ただ私の許可よりも、これから大変なのは宮田さんとの接触……、つまりは談話することです」


 やはり宮田と接触し、談話することが問題であると警戒している。

 まぁここまで言われるって、宮田の存在と性格は本当に酷いものなのだろう。


 しかしそれを承知の上で俺は瀬川さんに無理を言って、なんとか宮田との談話する時間を作れないかと聞いてみた。


 一応取締役として各マネージャーのスケジュールは把握している為、宮田の空いている日を知りそこで談話を設けたい。


 俺の言葉に瀬川さんは少し悩む仕草をして、少し時間を有するがそれでもいいならと了承してくれた。


 瀬川さんに頭を下げて感謝をした後、俺は部屋を後にして楽屋へ戻ることに。

 それからマネージャーの業務をこなし、昼食を取り涼音の配信時間を迎える。


『みんな、こんにちは……! 今日は雑談を交えてスマ○ラをしていこうと思うよ……!』


:こんにちは!

:おっ、これまたヒスイちゃんにしては珍しいジャンルだね

:最近流行ってるからね、楽しみだ

:クソザコプレイが見れそう

:いや、ゲームとはいえやれる子だぞ!

:とはいえ、ゲームのセンスが……()


 ライブルームと繋がってるもう一つの部屋で俺は涼音の配信を見守る。

 その隣には同じように旋梨ちゃんが座っておりどうやら音ゲーに夢中になっているようだ。


『このゲームね、兄さんがやってるの……。見てて面白そうだと思ってたから、どうせならみんなと楽しもうかなって……』


:そういや前に発狂してたもんなww

:兄貴がやってるゲームか、なるほど

:そう言えばお兄様は生きてるの?

:兄貴コラボはよはよ

:ヒスイちゃんなんのキャラ使うんだろう


『ふふっ、兄さんはちょっと仕事が忙しくてコラボはまた今度かな……。えっとね、使うキャラは兄さんの使ってたのにしようかな……』


 画面を通してスマ○ラのキャラクター選択に目を通す。

 俺の使っているキャラは複雑さ、それに加え一瞬の判断が必要とするド○クエの勇○なんだが、まさかそれを使う気か……?


『確かこのキャラだったと思う……!』


:悪いことは言わない、それはやめとけ

:○○さんの言う通り、やめときなさい

:あぁ、未来が見えるとはこのことか

:まぁ見てみようぜww

:ご愁傷様www


『むぅ……みんなしてバカにしてくる……。確かにゲームは苦手だけど、私だってそこそこやれるはずだもん』


 どうやら意地になったようだ。わかりやすいコメント欄の煽りに涼音は俺が愛用しているキャラを選択し、そのまま試合開始へ。


 相手は可愛らしいキャラのピ○ュー。だが見た目に反して使い手によってはバケモンに成り果てるやべぇやつ。


『基本的な動きと攻撃動作は知ってる……。でもなんかこのキャラって色々なコマンド?があって混乱しちゃうね……』


:あれ、意外にも戦えてる?

:やるやんww

:恐らくこれは兄貴とやってたなww

:けど五分五分だぞ!

:落ち着け〜、落ち着け〜!


 確かに鈴音は俺と少しだけやってた。けど毎回お決まりのように負けてたけど。

 それでもやっぱその少しが活かされているのか涼音の動きは悪くなかった。


『んっ……! ここ、ここ……! えっと、メ○ンテ……? これなんだろう……』


:よせヒスイ! メガン○の挑発に乗るなぁ!

:ヒスイイイイイイイイ!!www

:もう、おしまいだぁ……!

:押すなよ、絶対に押すなよ!

:だが時既に遅し


 うん、やるような気配はした。案の定涼音の使うキャラが神々しく光、大爆発。

 敵に大ダメージは与えたものの、その代わりに優勢だったと言うのにストックが削られる。


『えっ!? な、なにが起きたの……!?』


:これがあるからなぁwww

:無知って恐ろしいwww

:めちゃくちゃ流れ良かったのにwww

:メガンテ、つまり自爆技ということで


 メガ○テについて説明をしてくれるコメント欄が流れるのと同時に、何が起きたのか全くわからない涼音は混乱。


 その間にも敵プレイヤーの攻撃は火を吹き、あっという間にメテオされて終了。

 ポカーンとしている涼音に、コメント欄はwwwの嵐で埋め尽くされた。

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