一話・魔法の1歩⑪
「ス、スピネルさん。勝ちましたよ!勝ちました!」
アンライトは、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねている。
「おめでとうございます。ちゃんと見てましたよ…。どうですか?あなたはもう自分に自信を持てるでしょう?」
アンライトは、何度も頷いた。それがゆっくりとなっていき、下を向く。アンライトの頬には涙が伝う。
「スピネルさんはこれから、次の国に行ってしまうんですよね?」
「…そうですね。次の国と言ってもかなり遠そうですが…。あなたは、これから選手になるのですから、別れぐらいで泣いてはいけませんよ。」
僕の言葉にアンライトは、涙でグチュグチュに濡れた顔を上げ、きょとんとした。
「…僕、選手にはなりませんよ?」
今度は、僕がきょとんとした。だって、さっきまで選手のスカウトを沢山されていたじゃないか。
「あ、スカウトされていたのを見てたんですね?でも、僕断ったんです。僕…、魔法を教える先生になりたくて…。」
先生…。いったい何故に?
「なぜ、突然先生になろうと思ったんですか?」
アンライトは、ん~っと唸った後、「秘密です。」と言った。
秘密…。最近の若者は、秘密が好きだな。
「そうですか…。では、これから私は次の国に向かいますが、アンライトさんはどうするんですか?」
「僕は、学校に通って魔法を勉強します。これまで、あの魔女達にいじめられて行かなかったけど…。もう僕は、前の自分とは違うから、大丈夫です!」
アンライトの表情はこの一週間でだいぶ変わったような気がする。これなら、大丈夫だろう。
「それでは、行きますね。今度は、先生になって会えることを期待していますよ?」
僕が門に向かうと、アンライトは手を振ってくれた。しかし、すぐに駆け付けてきて、よく見るホウキを僕の胸に押し付けた。
「こ、これ…、持って行ってください。僕には、大会のホウキがありますから…。」
いいのか?と思ったが、これが彼女なりの感謝の気持ちだと思い、貰っておくことにした。
「ありがとうございます。大事に使わせていただきますね。それでは…。」
僕は再び歩きだし、門を出てウィッチマ国を見るとアンライトがまだ手を振っていた。
スピネルは、少し笑みをこぼしながら、進みだした。
ウィッチマ国は、魔女と魔法使いの格差がある国。魔王国は、種族で他人を見ず、個人自信を見てやれる国にしたいとスピネルは思った。
〇
古ぼけて今にも崩れそうな木の家の内からでかい木が堂々と立っている。周りの木々の葉も風でサラサラと少し揺れる。
高い木々の隙間から太陽の光がキラキラと差し込み、地面がミラーボールに照らされているかのように光る。
でかい木の根につまずいた僕は、膝小僧を手で優しく触る。ふと、視線を自分の足元に移すと、そこには水色と黄緑を足して引いたような色の液体が入った小さな瓶が落ちていた。
異性に転生してライフ生活‼~魔王国発展の旅~ まじポン @MaziPon
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