一話・魔法の1歩⑨
僕は、衝撃的だった。アンライトと戦っている相手が杖を持たず、拳で戦っているからだ。こいつ、ここまで杖なしで戦ったということか?アンライトはエア・スライドを撃っては引いて、撃っては引いてを繰り返している。しかし、相手は全て拳で弾き、全力で距離を詰めてくる。僕は、ハラハラで見ていた。間合いに来られると、拳で昇〇拳を撃たれて一瞬でKOだ。
もう、数十分ぐらいこの繰り返しをしている。空中で戦っているのは、もう二人になっていた。アンライトは、引くのをやめて急に立ち止まりエア・スライドを放った。相手は、拳で魔法を弾く。観客は、アンライトが負けたと思い、盛り上がる。
しかし、次の瞬間…。相手は倒れていた。今の今まで、ガヤガヤしていた観客席は一瞬だけ静まり、状況整理をするような声が聞こえる。
「…何が起こったんだ…?」
「た、確かに魔法は弾いていたはず…。」
僕は分かっていた。アンライトは二発撃ったんだ。一発目の後にすぐに二発目を撃ち、二発目を隠したんだ。それで相手は、一発目は防いだが、そのあとの二発目は防げなかった。
アンライトは、相手が倒れたのを確認するとホウキに乗って上空に上がった。すでに空中での戦いは終わっており、残りは二人となっていた。
「おいおい、やっぱり残ったな、チャンピオン!」
「応援するぜ、チャンピオン!」
観客が盛り上がっている中、僕は目を大きく開き、じっと一点を見つめる。雲一つない青空に二つのホウキが浮かんでいる。後ろ姿のアンライトの先には初日に路地裏で見た魔女の一人がホウキに乗って浮遊していた。アンライトの肩が少し震えているように見えた。
アンライトとアズトというチャンピオンは、少し何かを話した後、ホウキを操作して距離を取った。互いに魔法を防ぎながら、アンライトはエア・スライドを放ち、アズトは炎の球を放つ。ホウキで飛びながら魔法を撃つのでさっきみたいな戦法は使えない。アズトは、炎の球、炎の渦、熱風とかなり多くの技を使って攻撃をしてくる。それに対してアンライトは、エア・スライドと浮遊の魔法の二つ。それに、アンライトの得意な空中戦で押されている状況の中、炎でホウキを燃やされてしまう心配もある。これは、かなりきつい状況だ。
少しずつ少しずつアンライトが押されていき、ついに僕の頭の上で追い詰められた。アズトは、アンライトに杖を指し、いつでも魔法を撃てるようにしている。
「少し練習したくらいであなたが魔女のわたくしに勝てるわけがないのよ。」
アズトは、アンライトが大会に出ることが気に入らないようだ。それを聞いた途端、アンライトはホウキから降り、落下していった。魔法は受けなくて済むがそれでも、かなり高いところからの落下だ。地面に叩き付けられたらそれこそ負けてしまう。
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