一話・魔法の1歩 ①

 太陽の光に照らされ、かすかに銀色に光る髪を風になびかせながら、久しぶりに天井がない世界に出てテンションが高い彼女は、少しスキップしながら歩いている。


 魔王国ロベリアから一番近い国に向かうため、太陽とは逆方向に高原を歩いている15歳の少女。そう、僕だ。


 ロベリアを出てからもう丸二日も歩いている。いや~遠い!


 僕は城の書斎にあった地図を持ち出してロベリアから一番近い国、ウィッチマ国を目指しているつもりだ。


 魔王国で普段使われている言葉は日本語と全く違うものだった。ロベリアでは魔語が基本的に使われている。魔王国と言うのだから当然といえばそうだが…。僕は城の書斎に入り7年間、チェツリーに魔語を教えてもらったりしていた。おかげでだいぶ話せるようになった。


 この世界には魔族が使う魔語、エルフが使うエルフ語、獣人が使う獣語、アゲット族が使うアゲナット語、そして人間が使うエメルド語があるという。エメルド語は日本語とほとんど一緒のものだ。転生者の僕は最初からエメルド語(日本語)が使えていた。そのことにチェツリーはだいぶ驚いていたよ(笑)。エルフ語はダイナレスの方が上手だからと教わってみたんだが…、指導が厳しすぎて逃げ出したことはチェツリーには内緒にしている。


 地図には太陽と逆方向、つまり西に行けばいいと書いてある。もう二日も歩くのだ。流石に心配だが、歩き続けてみるしかない。


 ウィッチマ国は魔女と魔法使いの国で魔法が飛び交い、まるでテーマパークのような国だと本に書いてあった。ん~!楽しみだ!心はおじさんでも体はぴちぴちのJK。待ちきれない思いでいっぱいだ。しかし、あの本はだいぶ前に書かれたものだとチェツリーは言っていたな。ワンチャン、魔女や魔法使いだけじゃなく、チェツリーと同じ人間がいるかもしれない。人間ほど安心できるものはいないからな。


 しかし、思った以上に遠い。ご飯は国を出る時に持ってきた、チェツリーお手製のおにぎりのようなもので腹を膨らませた。中には酸味のあるものが入っていて、「むすび」というらしい。そのまんまだな。


 僕は今、地図で方向を確認しながら池で一休み中だ。一様、僕は、これでも幼い少女だ。体にも気を使わないといけない。


 池は、真ん中に小さい陸地があり、一凛の黄色い花が咲いている。池の周りにも色とりどりの花がたくさん在って素敵なところだ。結構、気に入っている。


 高原にはたまにある木と池以外は何もない。本には魔物もいるって書いてあったんだけどな。


 すると突然、池の反対側から大きな水しぶきが上がり、池に綺麗な虹がかかった。

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