異性に転生してライフ生活‼~魔王国発展の旅~
まじポン
第一章 プロローグ
君はこう思ったことはあるだろうか。
〈異性になりたい〉と。
今これを読んでいるあなたが女性なのか男性なのかわからないが誰もが一度は思ったことがあると思うんだ。いや、私だけか……しまった。「僕だけか…」だね。
女性だったら生理が来た時には男性になりたいと思うし、かわいいお店やファッションに興味がある男性は女性になりたいと思うことがある。それは決して恥ずかしいことではないと思うんだ。
大輝もそうだった。女性になりたい。今思えば、忙しい日常からの逃避だったのだろうか。
「女性になりたい」そう夢見た山本大輝(25歳)は、忍天堂に勤めていてね。結構エリートだったんだ。あの大ヒットした忍天堂46はみんながやったことあるんじゃないかな?あれ、僕が指揮をしていたんだ。
えっ?そうは見えないって?フフッあなたもまだ子供ね。人は見た目より何を結果として残したかが大切なのよ。あっ…また。
と、とにかく…大輝はそれなりに忙しかった。デスクにはいつも大量の書類があり、毎日のように会議がある。家に帰れば、会社でやりきれなかった仕事が待っている日々だ。
よく何事もやりすぎは良くないって言うじゃない?案の定、大輝は疲れが溜まって会議中に倒れたんだ。
病院に運ばれてコロナだと医者に言われた。働きずくめの大輝の体には免疫というのはなかったらしい。ここでみんなに問いたいのだが、死ぬと思ったときに走馬灯は本当に見えるのかい?僕は見なかったんだよね。ただ単に運が悪かったのか、はたまた、走馬灯を見るほどの思い出がなかったのか…。最初と思いたい…。
ともかく、大輝は倒れてから数時間後に死んだよ。
よく死の世界は三途の川や天国、地獄があるというが大輝の目の前には視界いっぱいの胸があった。これがまた見事な胸でなぁ……おっと失礼。
大輝は、死んだ後に転生したらしい。すぐに分かったよ。なんせ、大輝は元大手ゲーム会社に勤めていた男だ。転生なんてゲームでよくある話だからね。
しかし、よく見えない。視界全体にピントが合っていないようなそんな感じだ。それもそのはず。生まれたばかりなのだからな。目が発達していなくて当然だ。
あの時の僕は、頑張って胸に飛びついたよ。別に生きるためだ。断じて下心ではない。
父と母は僕のことをスピネルとよく呼んでいた。スピネルの石言葉は「安全」。健康に巣立ってほしいとかの願いがあるのだろう。いい名前をもらったと思ったよ。
ご飯は、固いパンを水でふやかしたものや雑炊みたいなものが多かった。この世界のご飯で未だにすごくおいしいと思える物を食べたことがない。
僕は、少しずつ大きくなっていく自分の体を見て、気づくことがあった。どうやら、自分には「あれが付いていない」らしい。つまり、転生して「女性になりたい」という願いが叶ったというわけだ。
けれど、僕が二歳になったあたりだったかな…?父と母の姿を見なくなったのは。別に僕の心はこの時点で27歳のお兄さんだ。これといって問題ではなかったが、少し心配であったのは確かだ。
両親が居なくなってから僕の面倒は二人のメイドさんがやってくれている。一人は、少し背の小さいピンクの髪のチェツリー・フーマ。見たところ、人間の女の子だ。面倒見がよく、少しおっちょこちょいだ。いつも僕にドレスを着させようとしてくる。僕は動きやすい服のほうがいいと何度も言っているのに…。
もう一人が、緑の髪に尖がった耳のダイナレス・エリフット。チェツリーより少し背の高いエルフだ。僕が話しかけると大体無視をする冷たい奴だが、ストレートの髪はなかなかにかわいい。
僕は5歳の時、チェツリーに父と母について聞いた。すると、父と母は旅に出たという。しかし、僕は父と母が幼い僕を置いて旅に出たことよりも驚くべきことを聞くことになる。
それは、この国が魔王国「ロベリア」という国で、僕の父が魔王だということだ。つまり、僕がロベリアの次期魔王らしい。こんなことがあるものなのか。そう思ったよ…。
つまり僕はコロナで死んでしまい、魔王を倒そうとする勇者や獣人、魔法が飛び交うファンタジーの世界に転生してしまったということだ。さらに、僕はその世界の最終ボス的存在の娘ときた。
その時の僕は、まだ小さくて外に出たことがなかった。だから、チェツリーにロベリアについて聞くと、サキュバスや悪魔、悪徳魔女が住む国だそうだ。どうやら、ロベリアには人間はいないらしい。さらに、ほかの国よりは発展が進んでいないとのこと。僕は、面白そうだと思った。なんせ、サキュバスがいるんだぜ。ワクワクしないわけがない。
城を出るのには、十歳になってからでないと危なくて出せないとダイナレスに言われてしまった。ダイナレスは怒ると怖いからね。僕は十歳まで待って楽しい転生ライフを送ると決めた。
十歳になって初めて城を出たときは驚いたよ。ロベリアは何時になっても暗いんだ。それというのも、地下にある国みたいなんだ。町の明かりは、街灯の明かりしかない。町全体が常にオレンジ色さ。通路がまっすぐあり、その両端に家が並んでいる。家の壁は土でできているようだった。
まず、僕はロベリアを探検した。しかしそれも、三年が限界だった。あまりにも国に魅力がないのだ。当然、娯楽も少なく直ぐに飽きてしまう。
僕はチェツリーから地下の上の世界について聞いてみた。地下の上の世界は多くの国があり、色々な種族もいるそうだ。その中に魔王を倒そうとする人達もいるらしい。僕は国の発展を目指して、十五歳になったら地下の上の世界で旅をしようと決めた。だって、あまりにも暇なのだ。国を発展させないといい転生ライフを送れないからな。それに、この世界には色々な種族がいるのだ。いい出会いがあるかもしれない。
今日、僕は地上に出る。ワクワクして昨日は良く眠れなかったさ。
〇
かきかき…かきかき…
土でできた部屋に羽ペンのこすれる音が響く。
机に向かってノートにペンを走らせる少女が一人。白髪は短く切られ、ピンと伸びる背中には高貴さを感じる。
旅の前に自分の転生旅路をまとめるのは小柄な少女、スピネル。
真剣にノートを描くスピネルは、後ろからのノックの音を聞き、振り返る。
「お嬢様。そろそろお時間です。」
クールな声で出発の時を知らせてくれたのは、ダイナレス。スピネルは、大人っぽい笑顔で答える。
「…ええ、すぐに行くわ」
スピネルは緑色のノートをカバンにしまい、部屋を出る。
城を出ると多くのロベリアの住人が出向かいに来てた。その中には、悪徳魔女やサキュバス、悪魔が多くいる。スピネルは城を出られるようになった5年間、色々な人との関わりを持っていた。できれば、旅の出発は静かに行きたかったとスピネルは思いながら、少し口角が上がる。
スピネルは、メイド達と国の住人に少しお別れの挨拶をし、地上を目指す。
地上に続く土の階段がスピネルにはとても長く感じた。階段を登りきると、街灯の何十倍にも明るく感じる太陽の光にスピネルは目を細める。久しぶりに浴びる太陽の光にスピネルは感動するが、すぐに気を引き締めてどこまでも続くような広い高原を一歩ずつ踏み出していく。
そう、これは元大手ゲーム会社に勤めていた男が女性に転生し魔王国、ロベリアを発展させるために多くの国々を旅する転生ライフ物語である。
〇
午後五時なのにほとんどの家の窓からほのかに白い光が漏れる。いつもは人通りが多い通路も空も今は、両手で数えられるぐらいしか人を見ない。数少ない通行人のほとんどは、家の屋根の下で雨宿りをしている。パン屋の前を通る時、屋根で雨宿りをしているおばさまたちの世間話が聞こえてきた。
「ねぇ~知ってる?最近、越してきた同属の子のこと。」
「知ってる、知ってる!よく国を抜け出す子のことでしょう?」
「そうそう。あの子、男の子なんだって。」
「あの子、男の子なんだ~。可愛そうに…。」
ぷつぷつと雨の量が多くなり、だんだん話し声が雨の音に消えていく。風邪をひく前に早く帰らないと…。
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