第2話 お嬢様は秀麗に
ゆいは教室に向かっていた。
さっき堅人に助けられてから心臓がバクバクいっているわ。まあ、つまづいたからっていうのもあるかもしれないけど。かもしれないけれど!それにしても、流石堅人ね。私を助けた時も、ずっとお堅い「業務モード」を続けて。こんなことで舞い上がってる私なんかとは比べものにならないわね。はっ!もしかして堅人が私になびかないのは私が幼く見えてるから?!
そんなことを考えてるうちに教室に到着する。答辞のため早く来たのでまだ誰もいない。
「堅人、少し練習をしたいのだけれど、」
「かしこまりました。原稿用紙です。」
「ありがとう。」
色々と考えてしまうけれど、取り敢えず失敗しないようにしなくちゃ!
その後5分程度2人での確認をしていた。いつものように堅人のことをグルグル考えずにゆいは集中していた。ぽつり、ぽつりと新入生が来始める。幸い学校の計いで隣の席になっているおかげで、小声で続けられた。
時間になると担任の先生が来た。大まかな入学式の説明をして、少しすると移動の合図が来た。そういえば忘れていたけれどお母様とお父様は大丈夫かしら。あの2人、外ではまともそうに振る舞っているけれど親バカなところあるから、、、恥ずかしいことしなければ良いけど、、、
列になって歩いていく。広々とした屋内運動場に観客席まで付いている。両親を見つけるのに瞬き程の時間も要らなかった。
馬鹿だ、完全に馬鹿だ。両サイド、後方、斜め前方からガチガチにカメラで撮っている。周りから浮きまくりのビシッと決まったスーツにサングラスの使用人まで使って。頼むから手を振らないで〜追い討ちをかけないで!そんな私をよそに入学式は進んでいく。
遂に私の答辞の出番がきた。さっきまで全然緊張していなかったのに緊張してきた。舞台へ向かう足はどんどん重くなって、手は震えている。絶対に失敗したくないと思うと表情が強張らずにはいられなかった。
皆の前にたったとき、ふと目の端に笑顔が目に入った。異様に惹きつけられるその表情は堅人のものだった。私には「大丈夫。ゆいならやれる。頑張れ。」そんなことを言っている気がした。堅人に勇気づけられ安心した私はリラックスして事を終えた。
諸々終わって帰路の車の中で
「そういえば堅人、どうして私の答辞の時に笑っていたの?」
と堅人に笑顔の理由を聞いてみた。すると、少しの間が空いた後こう答えた。
「、、、笑っていました?」
「ええそうよ。」
「それは失礼しました。」
「ちょっと、誤魔化さないで。私は『なぜ』って聞いたの!」
「、、、正直自分が笑っていたなんて知りませんでした。ただ、あの時は一生懸命練習したお嬢様の素晴らしさを生徒に感じてもらえると思うと、報われたような嬉しさを感じたのです。」
「そ、そう。ありがとう。」
いつもはちょっかいを出してくる両親も黙っていた。私は気恥ずかしさから窓の外を眺めた。
お嬢様、自分でやります ウルレア @SIMkun
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