第7話:美少女から濁点が取れた件。
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【前回のあらすじ】
姉さん! 事件です!
ぼくは今、社長の
夢のような時間でした。
そして、社長の
冷静に考えると、意味がわかりません。
あと、よくよく考えたら、そもそも〝乙女ゲー〟を作れ! と命令されていたので、〝乙女ゲー〟について考える必要があるんだけど、その前にどうしても社長の
姉さん! ぼく、ガンバルよ!
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ぼくと
ぼくは、大きな蕎麦シフォンケーキを抱えているもんだから、
裏口のドアを開けてくれて、エレベーターのボタンを押してくれた。
でもって、会社のドアも開けてくれた。
優しい。
ぼくと蓮ちゃんが、玄関で靴をぬいでいると、偶然、トイレから戻ってきていた
「おお、ご両人! 初デートお疲れまさです!」
悪い気はしなかった。
ぼくと
「はっはっは! お勤めご苦労!」
ふりむくと、そこに発子さんが、豊満な胸を腕組みで潰しながら立っていた。
「早速だが、新プロジェクトの発足を社員に報告したい! とりあえず、君たちの進捗を報告したまえ」
そういいながら、
ぼくは、とりあえず、分かり易く態度で示した。
「はっはっは! これはこれは! おめでとう!」
「つまりは、そういう事だな!
善は急げだ! ぼくはすぐさま
「
「なるほど、つまりは、君も苗字でイジメられていたのか」
「これはすまなかった。本当にすまなかった。いやはや、私はバカだな! 本当にバカだな!
そう。
陶器のように白くてツルンツルンなお肌をした
とにかく、自分の名前の〝濁点〟が大嫌いなのだ。
けぶかわ れんげ
この苗字と名前の、〝ぶ〟がとにかく大大大っ嫌いで、〝げ〟が、わりかし嫌いなのだ。
「いやはや、私と全く同じ境遇の世界一不幸な美少女がいたとは!
わたしもね、この〝
〝お蝶夫人〟と呼ばれてね。小学生なのに〝夫人〟と呼ばわりされてだね! 男の子に『ざます、ざーますですわ!』とバカにされてね! 枕を涙で濡らしたものだよ!!」
……うん?
確か、バカにされてムカついたから、両手をガシャコンと組み上げて、人差し指をバキュンと突き立て、イジメっ子を片っ端からカンチョーしまくって、ついでに校長先生もカンチョーしたから、〝カンチョー夫人〟って恐れられていたと聞いたんだけど?
……ぼく、
ぼくが、割とどうでも良い誤情報のことを思い出していると、
ポツリとつぶやいた。さっきからずっと頭を下げている
「頭を上げてください。
「つまりはあれだ。私に頭をさげさせたのは、
「はい。大好き……です」
は? どういうこと?
「いやー!
それよりも、今は私の目の前にいる世界一不幸な美少女の呼び名を考えなければならない。こいつは大問題だ!!」
発子さんは、豊満な胸を腕組みで潰しながら悩み始めた。
ちょっと意味がわからない。
あんまりにも意味がわからないので、ぼくは
「
「君はバカか! 大馬鹿ものか!!
我々が、世界一不幸な美少女のマイスイートダーリンと同じ呼び方をして良いわけないだろう! 君はもう少し物を考えて発言をしたまえ!!」
は? どういうこと?
全く意味がわからないので、ぼくは
え? そういうこと?
「うーん! 難しいねぇ! 〝レンレン〟〝レンたん〟〝レンたそ〟いやいやこれは、むしろ
は? どういうこと?
全く意味がわからないので、ぼくは
え? そういうこと?
「なんとか……なんとか苗字をもじって、うーん、濁点がイヤなんだから……〝けふかわ〟……ん? 〝けふかわ〟?? そうか、閃いた!」
そういうと、
「うぉーい、今すぐ全員集合! 命令」
「今日からみんな、この
彼女のことは、ペンネームで呼ぶように! 命令!」
は? どういうこと?
「彼女のペンネームは〝ケフカ〟だ!
今日から、正社員の〝ケフちゃん〟だ!!」
は? どういうこと?
ちょっと意味がわからないから、ぼくが呆然としていると、敏腕ディレクターの
「いいですね。ラスボスみたいでミステリアスだ」
つづけて、小説家兼、シナリーライターの
「同感。ちょっとイカれてる高笑いして登場しそう」
つづけて、CGデザイナーの
「ステキック! サイケデリックステキッカナブル!」
つづけて、今まさにタイムカードをガシャコンと打刻して、ウルトラスーパー重役出勤をかましてきたプログラマーの
「……よくわかんないけど、それで」
最後に、顔を真っ赤に染め上げた、蓮ちゃんが、おじぎをしながら肯定した。
「はじめまして、〝ケフカ〟です。呼び辛かったら〝ケフちゃん〟って読んでください。よろしくお願いします」
これが、後に00年代に一世を
〝ケフカ〟の誕生の瞬間だった。
愛称は〝ケフちゃん〟。
プロフィールは完全非公開の、天才イラストレーターだった。
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