第2話:ぼくがイケメン過ぎた件。
__________________________
【前回のあらすじ】
姉さん! 事件です!
ぼくがこっそり同人誌即売会で、女装コスプレしている事がバレてしまいました。
社長は、ぼくのことを、〝男の
でもって、会社の試用期間中デザイナーの女の子と、〝乙女ゲー〟? を作れと命令してきました。
ちょっと意味がわかりません。
あと白状すると、ぼくは今、めちゃくちゃ緊張しています。理由は、新人デザイナー
地味ショートの地味性格のはにかんだ笑顔が最高に可愛い美少女だからです。
姉さん! ぼく、どうすればいいんだろう……。
__________________________
新人のプランナーぼくと、試用期間中のデザイナーの女の子、
どうすればいいんだろう……。
いや、やるしかないんだろう。社長の
そして、
社長の
むちゃぶりをするけど、そんなむちゃぶりは大抵まかり通る。思いの外スムーズにまかりとおる。
なぜなら、作家をめざしていた先輩の
さらに、なんでもできる敏腕ディレクターの
つまり、
そして、
とくに、スケッチブックに描いてあった、ぼくをモデルに(していると思う)、紫色の魔法少女と、ちょっとドジなメイドロボットのスケッチは、やばいくらい上手い!!
心を持って行かれそうなくらい、やばいくらい可愛かった。
でも……。
可愛く描けるのは、女の子だけじゃなんじゃないかな? イケメンイラストは違うもの。確かにめっちゃイケメンだったけど、何の感情も動かなかった。
いや、ぼくが、男だからってのも、モチロンあるけど、そういうんじゃなくて、もっと根本的な〝リアル〟がなかった。そう!
〝リアリティ〟が全くなかった。
ちょっと悪い表現をしてしまうと〝うすっぺら〟かった。
まあ、紙にかいてるんだし、二次元だし当然なんだけど、そうい言う事じゃなくって、要するに、妄想がふくらまなかった。まったく妄想が
もう一度、確かめよう。もう一度、スケッチブックを観れば、絶対にわかる。
「
可愛い。
ぼくは、可愛い
「そのスケッチブック、もう一度、見せてもらっていもいい?」
ぼくが、努めて冷静にうわずった声でお願いすると、
可愛い。
ぼくは、努めて冷静に震える手でスケッチブックを受け取ると、最初のページから、ゆっくりとスケッチブックをめくっていった。
最初に描かれていたのは、紫色の髪の毛で、紫色の服を着たの魔法少女だった。
子供向けのアニメーションのキャラクターで、最初は敵だったけど今は味方になっている人気キャラクターだ。小悪魔的な瞳がとても特徴的なキャラクターだ。
そしてこのスケッチブックは、そのキャラクターの特徴を、びっくりするくらい捉えていた。オリジナルは、結構特徴がある絵柄で、とくに体のラインが特徴的なんだけど、その雰囲気を崩さないで、自分の解釈で、可愛く再解釈をしていた。
ちょっと、下品な言い方になるけど〝なまめかし〟かった。端的に言うとエロかった。そして、この紫色の魔法少女のポーズには見覚えがあった。
いや、アニメのバンクシーンのポーズだから、見覚えがあるのは当然なんだけど、そう言う意味では無く、ついさっき写真で見たポーズだった。ぼくのことを
僕は、スケッチブックをぺらぺらとめくった、今度は、メイドロボットが描かれてあった。これもぼくだった。さっき、
天才だ。
仕事が終わってから、ゲームをやりやながら、姿見の前に立って、あのメイドロボットの可愛らしく尊い様を、この現実世界に再現するために、三次元として、この世界に降臨させんがために、必死こいて努力をしたんだ。
その努力の結晶を、
天才だ。
ぼくは、
限定付き天才だ。
イケメンはてんでダメだった。見た事がないイケメンだから、オリジナルなのかなとおもったら、よくよく見たら有名アイドルグループのメンバーを、
でもてんでダメたった。キラキラしているけど、ペラペラだった。うすっぺらかった。まったく〝リアリティ〟を感じなかった。
限定付き天才だ。
いや、こんなに上手な絵に、ろくに絵を描けやしないぼくが偉そうに言うのはなんなんけど、この絵のキャラクターにシナリオが入っても、声が入ってもペラペラのままの気がした。
これでは無理だ。社長の言う〝乙女ゲー〟? なんて到底作れっこない。そもそも、女性向けゲームは極端に少ないんだ。きっとゲームを遊ぶ女性も極端に少ないんだ。ゲームってそういうもんなんだ。それがゲームの歴史なんだ。運命なんだ。2000年11月の現在においてもずっと継続している事実なんだ。
メジャーどころの女性向けゲームなんて、歴史ゲームで有名なゲームメーカーが創ったやつ位しかすぐには思い浮かばない。
女性向けゲームは、超がつくマイナージャンルなんだ。
マイナージャンルに、うすっぺらいイケメンしか描けない、なんの実績もないキャラクターデザイナーが担当したゲームなんて、だれが遊ぶんだよ!?
だめだ。今回ばかりは、
ぼくは、ペラペラとスケッチブックをめくり終えて、
最初のページが、ぼくをモデルにした紫色の魔法少女だから、たぶんだけど、
でもって、比較的低コストでできる、PCゲームの制作にゴーをだしたんだろう。
でも、ダメだ。こんなんじゃダメだ。
神がかり的に可愛い女の子のイラストにくらべて、男の子は全然ダメだ! ぜんぜんイケてない。うすっぺらいイケメンじゃあダメだ。
なんで、イケメンは描けないんだろう。女の子はあんなに可愛く描けるのに……。
(あ、ちょっとややこしいから弁明します。自分が可愛いとは言ってないです。いや少しは可愛い自信があるけど、
ぼくは、はやく最終ページにならないかなと思いながら、ぺらぺらのイケメンが描かれているスケッチブックを素早くめくった。でも、最終ページで手が震えた。
心が持って行かれた。
とんでもなく、イケメンの男の子だった。さわやかで、カワイイ、可愛らしいイケメンの男の子だった。でも知らない男の子だった。アイドルにも、俳優にも、アニメにも、ゲームにもいない。だれがモデルなんだろう? さっぱりわからない。
でも最高にイイ。妄想が
興奮が抑えられないぼくは、興奮で声を震わせながら、
「こ、これ、だれがモデルですか?」
そう言うと、
可愛い。
そして、可愛い
「ぼく!? いやいやいやいや、全然似てないよ???」
可憐な美少女の
可愛かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます