第4話 ff

━そんな事言うなよ。

 

バンドを抜けると言う自分にコウジは反対した。


『確かにさ、コピーした曲はジャンル無視した内容だったから、次はオリジナル作ってやろうぜっ!!』

 

コレがコウジの代案だった。

 

オリジナル!?マジか!?

それは本気でやるって意味かっ!?

 

オレはそもそも遊びの延長でやってたし、みなもそうだったハズだ。

この提案はバンドを二分する結果となった。コウジは初期メンバーのダイスケ(リーゼント)と殴り合いのケンカを繰り広げ、他のメンバーも立場を決め兼ねていた。

 


ミーティング。

 

 

さて、オリジナルと言っても誰が作る??メンバーは勉強すらまともにやってないヤンキーばかり。

音楽理論なんて誰も知らない。

 

ど~すんだよ??

なんとなくいつの間にか集まる回数も減り、夏休みはアッという間に終わりを告げた。

 

 

 

学校。

 

 

また、死んだように生きる日々が始まった。

あんなに楽しかった夏の日々は、まるで嘘だったんじゃないかと思えた。

ジリリとなるチャイムの音が、その余韻を打ち消すように鳴った。


学校の帰り路。

 

追いかけてくる声はない。


今思うと何故なんだか解らないが、秋も深まった頃、コウジに電話を掛けていた。

 

『オリジナルバンドを作ろう。』

 

コウジにそう伝えたんだ。



━新バンド結成!!

 

 

書店には音楽雑誌がいくつも置いてある。『バンドやろうぜ!!』や『GIGS』、『ロッキン・オン』や『プレイヤー』。

今はネットの時代だからあまり見かけないが、当時は音楽雑誌の後ろには、ほとんどの雑誌がメンバー募集を載せていた。

 

めぼしい所にはハガキを送り、会っては断り断られ、かなりのメンバー候補とセッションした。

当時、活動の基本は足だ。雑誌はもちろん近辺のスタジオの貼り紙にも連絡した。

 

だけどやっぱり中々メンバーは決まらず、ドラムとキーボードだけでは曲も出来ない。

曲が出来ても歌がない。完全に手詰まりだった。

 

ちょうどその時だった。

 

地元じゃ有名なバンドが解散するという情報が入ってきた。

そのバンドのギターとベースは親交があったから、コレを逃す手はない。オレらは勧誘を含め、ライブに向かった。

 

ボーカルは決まっていなかったが、ひとまずコレでバンドとしての形は出来る。

返事をもらった訳でもないのに、心が躍ったよ。

そうしてオレらはオリジナルバンドを結成したんだ。

 

しかし、やはりボーカルだ。

コレばかりはどうにもならない。

 

頭を悩ました結果、またもやコウジが驚くようなセリフを口にした。

 

『あのさ、歌やってみない??』

 

ありえない事をオレに言ったのだ。


━歌。

 

元々人前で演奏するなんてと思っていたオレにとって、歌うなどとんでもない!!

合唱コンクールだって、人前で歌うのがイヤで伴奏を選んだんだ。

 

ありえない。


 

うん、ありえない!!

断るオレに、コウジは言った。

 

『あのさ、気付いてないかもしれないけど、このメンバーで一番歌えるの、お前だよ?』

 

嘘だろ??だとしたら、バンドとしては致命傷だろ。

 

『じゃあ、これからそれを確かめに行こう。』

 

半信半疑のメンバーと、断固拒否のオレはスタジオへ。

そして、オレ以外のメンバーの総意でこのバンドのボーカルが決まった。

 

新しく入ったメンバーのお陰もあってオリジナル曲は瞬く間に増え、オレらは初ライブを迎えた。

ボーカルとしての初ライブ・・・。それはこの先にとんでもないトラウマをオレに植え付けた、記念すべき(?)初ライブだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る