第10話 創造主
この世界を創り変えてやる。
それはワタシだけが知っている、ワタシの覚悟。
その為なら何だってする。感情なんて物はとうの昔に捨てた。
これまで幾つもの「印」を狩ってきたワタシだが、それは全てワタシの目的を果たす為だ。
この世界を創り変えるには、この世界の頂点に立たなければならない。そうでなければ誰もワタシの言葉に耳を貸さないだろう。だからワタシは誰よりも「印」を狩るのだ。そうやって最短距離でこの世界の頂点に立つのだ。
『魂は陽に属して天に帰し、魄は陰に属して地に帰す。荼毘に付されよ。』
この世界に生まれてから幾度となく唱えた古の言葉。
そしてこう続ける。
『カーマ・ダルマ・アルタ・モークシャ』
すると人間の魂は器を残してワタシたちの世界に魂魄のみが導かれるのだ。
「印」を狩るにはまず声でコチラの世界に導かなければならない。
声を届けるには2つの方法がある。
1つは直接頭の中に声を届ける方法だ。しかしそれは、自分の姿を人間の世界で見せる事になる。「印」と対面した状態でなければ声は届ける事が出来ないのだ。
全ての人間にワタシたちが見える訳ではないようだが、「印」以外の人間に姿を見られる事はなるべく避けたい。だから、基本的に姿を見せるのは「印」を見つけた時と、実際にその魂を狩る時だけだ。
そしてもう1つ。人間の世界に存在する、公衆電話なるものを使う方法だ。しかしコレには制限がある。人間の世界でいう午前2時から午前2時30分の僅かな時間のみ。その僅かな時間のみが、自分の姿を見せる事なくコチラの世界と人間の世界を繋ぐ、唯一の時間と方法だ。
だからワタシたちは、まずその時間に「印」を公衆電話でコチラの世界に導く。この段階では魂魄と器が、人間の世界とワタシたちの世界のその狭間に同時に存在している状態だ。
「印」が現れた人間の行動は操る事が出来る。
「印」を公衆電話まで連れていき受話器を取らせる。人間の世界では突然存在が消えたように感じるだろう。
そして、「印」に自分が次の器である事を認識させる。意識が既にない器に抗う手段はない。ただ、己の存在が器であるという事が潜在的に植え付けられればそれでいい。
その状態で対面し誓いの言葉を唱える。すると魂魄と器に人間は分離し、魂を得てワタシたちは次の年に転生する。魄は新たな器を求める存在となりワタシたちの世界に転生、人間の器は荼毘に付される。
それがワタシたちの世界の理なのだ。
ワタシが望むのは、人間と関わらずに自分たちが存在し続けられる新たな世界の創造。
人間はワタシたちの世界を破壊する憎むべき存在だ。
ワタシはトリカブト。この世界を創り変える神になる。
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