第5話 虞
私は一睡もする事が出来なかったが、朝になり改めて警察と地元の消防団の方々によるるいの捜索が再開された。
夜中に見つけたスーパーボールはるいの物だと確証はなかったが、手掛かりになるかもしれないと警察の人が回収していった。
しかしるいは見つからない。
両親も朝に駅前でビラ配りを始めたが、何の手掛かりも見つける事は出来なかった。
1週間・・・
2週間・・・
るいは戻って来ない。私は学校にも行く事が出来ずにいたが、このまま登校せずにいる訳にもいかなかった。
心は悲鳴をあげている。
いつか必ず戻ってくると私達家族は自分に、そしてお互いに言い聞かし心が完全に沈んでしまわないように必死だった。
ようやく学校にも登校するようになった私だが、周りの私を見る目が確実に以前とは変わっている。
口では優しい言葉をかけてくれる友人や先生たち。だけど。
私はもう耐えられなかった。
その後は学校もほとんど行けなくなってしまった。中学生になっても学校に行くのが嫌だった。学校に行けばまた、みんなの優しさという名のナイフが私の心を壊していく。
両親も色々考えたんだと思う。私の事もあるだろうけど、父方の実家に同居する形で引越しを決めた。
そして私は転校し、これで周りの目に怯えずに済む。そう思ったの。
それなのに。
『ごめんね・・・。』
それだけ言うと本間さんは黙ってしまった。その時の恐怖からか、彼女の表情は真っ青だ。
僕は何て言えばいいのかわからなかった。例え何か口にしたとしても、僕に何が出来る訳でもない。
しかし何故だ?何故僕にその話を?本間さんに起きたその出来事は、誰にも知られたくない話の筈だ。
そして、本間さん自身もるいに何が起きたのか未だわからずにいる筈。それなのに何故・・・。
何て言えばいいのかわからない。それに、やはり僕に出来る事なんて何もない。
それを察したかのように、しばらくの沈黙の後本間さんはこう言った。彼女の表情はさらに硬くなっている。
『君に聞いてほしかったのはね、もしかしたら何か知ってるんじゃないかとさっき思ったの。』
『え・・・?』
『さっき2階からリビングにいる君を見つけた時、上からだったから見えたの。君の首の後ろ・・・』
僕の背中に嫌な汗が流れる。今まで感じた事のない程の恐怖だ。
(嘘だろ・・・まさか・・・)
彼女は震える指で僕の首の後ろを指差した。
『そのTシャツの襟元から見えてるそれ・・・何・・・?』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます