第2話 友

 男の故郷は小さいながらも迷宮があるおかげで栄えていた。男は迷うことなく、1つの建物に入って行く。ここ-ダナード-にある唯一の「迷宮ギルド」に。

 迷宮ギルドは迷宮へ行く者達の活動を支援している機関だ。扉をくぐり、左手にある受付カウンターへ足を向ける。


 迷宮ギルドは迷宮に行く者たち活動を支援している機関だが、それ以外にも村の商人からの荷運びや護衛などの依頼を迷宮探究者達に紹介したり斡旋なども行っており、場合によっては魔獣や野盗などから村の防衛なども行うだ。


 扉を開ければ、向かって右側に歓談スペースがあり、左側には受付がある。

男は迷うことなく受付カウンターへ向かった。受付には3人いたが一番手前の男性に話しかけた。


「すまない、クライスというがギルドマスターのアランに会いに来た。取り次いでもらいたい」


 クライスがそう言いながら、アランの裏書がある封筒を見せた。この手紙は2か月と少し前に届いたものだ。内容は少しの雑談と相談したいことがあるとしか書かれていない。受付の男性は「少々お待ちください」と短く告げると席をたち、奥の扉へ消えていった。

 待っている間にクライスは改めて周りを見渡す。ギルドに入ったときから気にっていることがあったからだ。右手の歓談スペースは探究者達の様々な情報交換や、依頼者と探究者との打ち合わせに使われる。歓談スペース側の壁には依頼書が所狭しと張られているのに対し、それを見ている探究者達があまりにも少ないのだ。

 クライスはちらりとカウンター奥の扉を見るがまだかかりそうな気がしたので、依頼掲示板を見に行く。張り出された依頼書をざっと眺めたが、どれもめずらしくもない「迷宮案件」ばかりだった。


 迷宮:創造神が人々の修練の場として作ったとも魔の支配者が欲深い人々を喰らうために設置したとも言われる場所。それはこの世界の歴史書に突如と現れ、地下に降りたはずなのに空があり、風が吹き、太陽が輝いているなど誰が想像できただろうか。倒せば霞のように消えてしまう事から“魔獣のようで獣ではない物”-魔物-と呼んだ。その魔物からまれに入手できる魔力がため込まれた石。のちに迷宮産と呼ばれるようになる初めて見る薬草や鉱石。人々はこれらを使い新たな道具や薬を生み出し、新たな産業と経済活動を与えた。


(どれもこれも比較的簡単な依頼ばかりじゃないか。古いものだと半年も前の物が残っている...一体どういうことだ?)


 クライスがそう思った時、背後に人の気配を感じ、振り返ると先ほどの男性職員だった。


「お待たせしました。ご案内しますのでこちらへどうぞ」


 カウンターを横切り、2階へ続く階段を登る。ある扉の前で立ち止まると、3回ほどノックをした。中から短い返事が返ってくると男性職員は扉を開け、クライスを中へと促して、きた道を戻って行った。

 部屋に入るとダークブラウンを基調とした品の良い部屋だったと感じさせる光景が広がっていた。

 そこらかしこに散らばる書類と思わしき紙、ソファー投げ出された上着、コーヒーでも飲んだのだろうか?空のカップが机の上放置されていた。この状況を作ったであろう人物は執務机で大きな体を少し小さくしていた。


「よお、久しぶりだな!まぁその辺にでも座ってくれ。」


 クライスに笑顔を向けるこの人物が、友人でありここのギルドマスターのアラン・カールトンだ。

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