第10話 友達100人できるかなぁ?
結局、極々一部ではあるが、この船に搭載された兵器の能力を解放せざるを得なくなってしまった。
相棒が放出した磁器浮遊型小型ドローンには監視、通信、中継の他にも強襲用の戦闘能力がある。
この極小ドローン100体程度を集めて1メートルから4メートル程度の仮想レールを2本作り、そのレールの間に磁気加速空間を生み出すことで、簡易型レールガンとすることができるのだ。
弾丸にはドローンを核とした加工重量物を使用、発射初速はマッハ25(毎秒8500m以上)にも達する。
勿論、ドローン単体でもマッハ10程度では飛ぶことができるが、そのためには加速する為の長い時間と空間が必要になる。
狭い地下ダンジョン内部では、どう頑張っても時速400kmも出せれば上出来だろう。
だが、その程度の速度では5gにも満たないドローン単体で衝突時の破壊力を生み出すことはできないのだ。
そこで、先に散布したドローン群をダンジョン内部に侵入・集結させることでレールガンを作り出し、それをぶっぱなそうという狙いだった訳だ。
当然、従者のふたりにレールガン発射の瞬間を見られるのは御免被るので、ここからさっさとご退場いただきたかったのである。
なお、見られたくないのはアステリア嬢にも同じだ。
単に情報を与えたくないというだけではなく、弾丸が崩落物を突き破って飛び出してくるであろう
これでは何のための救助活動になるのやら、であるからだ。
という訳で、まずは彼女を曲がりくねった通路の奥へ奥へと引き換えさせ、安全を確保する。
それから弾丸となるドローンに一定周波数の磁気をまとわせることで周辺の重金属を集めて50g程度と1kg弱の弾丸それぞれを形成。
これらの作業を終えてようやく、衝撃によって通路の崩壊を起こさない発射速度を計算した後にレールガンは発射される。
最初に調整のための小さな貫通孔をひとつ。
次が人間が通るための穴となる。
最終的に完成した直径2mを越える通路は弾丸通過の際に生まれた熱によってガラス状に輝くこととなった。
☆ ☆
「なあ?」
「なに?」
「ありゃ、一体どういう事なんだ?」
少し居眠りしている間に、彼女たちの様子に変化が起きていたようだ。
ブリッジ内部の巨大なメインモニターに映し出されたアステリア嬢御一行の姿を見ながら、思わず妙な声が出てしまう。
彼女らはせっかくダンジョンから脱出できたというのに、まるでお通夜のような状態になってしまっている。
特にアステリア嬢は、
「もう終わりや、終わりなんや、金が無いのは首が無いのといっしょや~」
と翻訳機構がおかしなことになるほど錯乱してしまって収集がつかない。
あの台詞はローティーン美少女が吐いていい台詞ではない。
揚陸艦コルンムーメ搭載の中央コンピュータの翻訳能力が元から低かったのか、それを乗っ取った相棒に問題があるのか。
十中八九は後者だろう。
で、その相棒は、と言えば、
「んぅ~。3カメさん、そこで引いて下さい~」
7台のドローンを使ってドキュメンタリー風に多方向からカメラを回し、泣き顔も可愛いなどとぬかしつつアステリア嬢の録画に励んでいる。
「おい!」
「はお?」
「はお、じゃねーよ。あれ、なんなんだよ!」
「むぅ、聞いての通りだぉ。ダンジョンに潜ったはいいけど、お宝は手に入らず、臣下は危険を理由に引き上げを主張。
主の安全を優先するからには当然だけど、それじゃあ叙爵の為の金策が成り立たない。
仮に金無しで叙爵を終えても、
あと特に、足をケガをした家臣がいるらしくてさぁ。その人の義足代だけでも稼ぎたかったらしいんだよね。
そういった予定が全部パーになったんで、ああして自暴自棄みたいになっちゃってるってわけ」
「……そりゃ、ひでぇな」
「んんっ、酷いって?」
「まあ、色々だな。
まず、お宝があるかどうか分からんダンジョンに潜るのが金策ってのがな……。
普通、そういうのは金策とは言わん。一般的には”皮算用”って言うんだよ」
「後は?」
「止める大人はいなかったのか、って事だが、中世社会の主従関係ってのは俺が思うより複雑なのかも知れんからなぁ」
「んぅ~、ああして錯乱してるのは責めないんだねぇ」
「どうして責める?」
「だって貴族なんだから」
「貴族だから、いつでもしゃんとしてろってか? 馬鹿言うなよ。
高々13の小娘。ヒステリー起こして周りに当たらないだけ立派だと思うぞ。
何より泣いてる理由が足を失った臣下のためってのが、また泣かせるじゃないか」
「うんうん」
「ついでに若い新領主をまったく信用しない上に薄情者な領民のために必死で頑張ろうって姿も泣かせる理由に追加しとくか?」
「ああっ! あの騒ぎ、そういう意味だったんだ!」
「まあ、こんな金策する段階で領民の言い分も分かるが、恩あるはずの前領主の
何より、ドローンからの情報をまとめてみると、あの子が死んだらいよいよこの村も終わりだって事、領民どもは全く理解できてないな。
無学ってのはホント、救えねぇよ……」
「そこまで知ってて、彼女をかばって苦労してた二人をいじめてたんだ?
それこそ酷いな~」
「まあ、そう言うな。あの子の為には必要だったんだよ」
「んふっ、いい子だもんね」
「……そう、だな」
「というわけで、我がコルンムーメは彼女を全面的に支援しようと思うのですが、艦長いかがでしょうか?」
「うわ~、ええあいがはんらんをおこしたぞ~」
「ぼうよみありがとうございます。なお、これを手はじめに!」
「手始めに?」
「んぅ~、美少女ハーレムを創るんや。目標は100人やでー」
「やっぱり。あの酷い意訳の原因は、おまえか……」
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