一万十秒物語

 自作を漫画化するなら誰に描いてもらいたいか。

 私の回答は倉多江美さん。ムダな線がないから。


 その倉多さんの「一万十秒物語」を読了した。全三巻でBeagleeから出ている。

 1980年代に描かれた短編集なのだが、オチも何もない、もしくは取って付けたようなオチの作品が目に付く。

 ただ単に思い浮かんだ場景を描いただけのような作品が多い。

 ではつまらないのかというと十分におもしろいのだが、決して不条理を楽しむ作品ではない。

 見た夢を写したようにも思えない。何ともふしぎな物語集である。

 一歩間違えれば、何にも引っかからない、作品とは呼べないものになってしまうところを、独特の描写で、お話として成立させている。


 よくはわからないが何となくはわかる、ただ描いてあるだけに見える物語たち。

 一言でいえば、そういう短編集である。

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