第4話 推進するストーリー

僕は幸福を保ったまま、ラミレスのいる家まで帰ってきた。


「たっだいまぁー」


「お帰りなさーい。あれれ?ウェイちゃん、今日テンション高いね。何かいいことでもあったの?」


ラミレスは僕の顔を覗き込む。


「今日ね、ランキング上がったんだぁ」


僕はいかにも嬉しそうな口調でラミレスに言った。


「え?ほんと!?何位ぐらい上がったの?」


「えーと……6211位になった」


「え?」


ラミレスはぽかんとしている。


「僕、今日で652万人くらい順位抜いちゃった」


「え…えっと……どゆこと?」


「本当にそれ。僕もなんかよく分からないんだよね」


僕は木製のテーブルに備え付けられている椅子に腰掛けた。

そういえば…今日一回も座ってなかったな…

まぁ、怒涛の一日だったししょうがないか。


「私よく分からないんだけど、とりあえずウェイちゃん、すごいじゃん!!」


ラミレスはにこやかな顔で僕に拍手を贈る。


「ありがとう」


一つ一つのパチパチという音を僕は聞き余すことなく吸収した。

本当にラミレスがいるから僕は頑張れるのだろう。

癒されるもんな…


「あれ?なんかいい匂いがするな…」


僕は鼻をくんくんとさせながらそう言った。


「今日はね、ビーフシチューを作ったの」


「へぇぇー。ラミレスって何でも作れるんだな」


「そうかなぁ…」


ラミレスはもじもじと恥ずかしがる。いくらなんでも態度が素直に出すぎだ。

まぁ、そこが可愛いんだけどね。


「じゃあ、ちょっと着替えてくるから」


椅子から立ち上がった僕はラミレスにそう言った。


「うんっ!その間にご飯の準備しとく」


僕は着替えを済ませるために奥の部屋のクローゼットに足を進めた






~一方その頃、政府中枢司令部では~





「私をここに呼んでどうしたんですか?」


金色のロングヘアをしている女勇者のミラは面倒くさそうに頭を掻きながら最高司令官を見る。


「何をとぼける必要性がある…本当はもう勘づいているんだろう?お前が呼ばれた理由…」


「モンスターの討伐依頼とかなんかです?」


薄暗がりの部屋の中、ミラは何にも動じないような素振りでそう答えた。


「…違う」


「じゃあ、なんですか?わかりませんよ」


ミラは両手を上げて、お手上げポーズをした。


「……底辺クエストにシーズドラゴンが出てきたっていう事件はさすがに把握しているよな」


「あぁーはい。あのガキんちょがシーズドラゴン真っ二つにしたやつですよね」


「あぁ。今回、お前を呼んだ理由はこの事件に関係しているのだが……何かこの事件、不可解だと思わないか?」


「いえ、全く。どこがですか?」


ミラは考えていないだろうと思われるほどのスピードで即レスした。


「はぁ…お前、わかってるくせに…」


「ええっ?分かりませんよ」


ミラは未だ、とぼけたままだ。


「私たち、政府がクエストの内容を誤報することなんてことは、まずないだろ?」


「まぁ、そうですね」


「だったら、この事件の原因はどこにあると思うか?」


「うーん…悪党がクエストの情報をすり替えたとか?」


最高司令官は頭に手をやる。


「……やっぱりわかってんじゃねぇか」


ミラは舌をペロッと出して「テヘペロ」と一言。


「……なんでわからないって言ったんだよ」


「え?なんとなくですっ。なんとなく知らない体で行った方がいいかなって」


ミラはぱちくりと大きなウインクをする。


「なんとなくって……俺も舐められたもんだな」


最高司令官は呆れ顔でそう言った。


「じゃあ、私がそのクエストの情報をすり替えたやつらを炙り出せばいいってことですね?」


ミラは改まった態度で言った。


「あぁ…出来ればミラの方で始末も済ませて欲しいのだが…」


「……うーん」


ミラはしばらく何かを考えた後に、おもむろに言葉を発した。


「分かりました。受けてあげますよ」


「本当か?」


「はいっ。勇者ランキング2位の私の実力を見せつけてあげます」


ミラは誇らしげに胸を張った。


「さすがミラ……助かるよ」


ミラはニコッと微笑んだ。


第4話 ~fin〜

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