第25話 追跡者
◇
「私は紳士的な男だ。故に、君たちが素直に答えてくれるのなら荒っぽい事はしない……確かにそう言ったと思うが?」
フードを目深に被った痩せぎすの男……死神と呼ばれる魔法使いはため息をついた。
彼の足下には血だらけになった無骨な男達が倒れている。
「……ふざけやがって。何もんだテメェ」
そう呟いたのは、裏社会では腕利きの情報屋として名を馳せている男だ。
商売の性質上、荒事も珍しくはない。故に情報屋は護衛の腕利きを常に数人つれているのだが……。
結果は無惨だった。
突然やってきた無礼なフード男。護衛の3人が取り囲むと次の瞬間には彼らは血だらけで地面に伏していた。
何が起こったのかはわからない。
ただ、目の前の男が危険すぎるという事は嫌ほど理解できた。
「もう一度言う、私は紳士的な男だ。君が素直に答えてくれるのなら荒っぽいマネはしない」
静かな口調だったが、良く通る声だ。
情報屋は冷たい汗が背を伝うのを感じながら頷いた。
「わ、わかった。何が知りたい?」
「”不動” と呼ばれる傭兵の事は知っているな?」
「……あぁ、有名人だからな」
「そいつの居場所が知りたい。簡単な情報だろう?」
「居場所だと? 残念だがそんなピンポイントな事は知らねえな。力になれなくて悪いが……」
情報屋の言葉を遮るように、死神はスッと右手を横に振った。
足に走る鋭い痛みと供に情報屋は地面に崩れ落ちる。見ると、彼の両足は綺麗に切断されていた。
鋭い悲鳴を上げる情報屋。死神はしゃがみこみ、彼の頭を持ち上げて目線を合わせる。
「面倒な探り合いは好きではない。奴がお前から情報を買った事くらいわかっている、下手な嘘はやめておくのだな。次はその両手を切り落とす」
死神の冷え切った視線が、その言葉が脅しでない事を悟らせる。
情報屋は必死で答えた。
「わかった!! 言うって!! ……不動はリリアムという廃都市に向かった! 嘘じゃねえよ!」
「廃都市? 何故だ?」
「”魔鉄”っていう放浪の鍛冶職人を探しているらしいんだ! ほら、話しただろ! 助けてくれよ」
「……鍛冶職人。なるほどな」
コーデリクの鎧は闇魔法により破壊されている。新たな装備を揃えるため、腕の立つ鍛冶職人の元へ向かったというのは納得のいく話だった。
「話してくれて助かったよ。では……」
そう言って死神は右手をスッと横にスライドした。
必死の命乞いをする情報屋の首は、死神の手の動きに合わせるかのように切りさかれ、鮮血が傷口から吹き出した。
バタリと倒れる情報屋の体。
死神は立ち上がり、顔に付着した返り血を拭う。
「廃都市リリアムか……少し遠いな」
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます