第23話 可能


「……なるほどな、だいたい状況は把握した」


 食事を終えた後、コーデリクの話を聞いた魔鉄。不機嫌そうな表情をしてジロリとコーデリクを睨め付けた。


「鎧を雑に使いやがって。アタシの鎧を使い潰してノコノコとやってきた訳だ」


 皮肉を言う魔鉄に、コーデリクは素直に頷く。


「無礼は承知の上だ……俺にはどうしてもアンタの力が必要だ」


「……そうかい。まあ、確かに相手があのグラベル家じゃあ、相応の装備は必要か」


 そして魔鉄はグッと手元の酒を飲み干し、ポツリと呟く。


「確かにアタシならば可能だ」


「可能?」


「グラベル家に対抗できるような装備……だろ? アタシならば作れる…………だがそれは原理上可能というだけだ。その闇魔法とやらで破壊ができないほど頑丈な鎧を作ることはできる……だが、相応に装備の重量は重くなるだろう。戦士で無いアタシには、はたして現実的にその装備で戦えるのかはわからない」


 前の装備でもかなりの重量があった。


 それこそ、コーデリクのような桁外れの膂力が無ければ装備できないほどに。


「つまり……その装備が使えるかどうかは俺次第という事か」


 コーデリクの言葉に、魔鉄はコクリと頷いた。


「その通りだ……それで、やってみるかい? アタシが新しい装備を鍛えても、もしかしたらボウズには扱えないかもしれない」


 前の装備よりも重量が上がるというのなら、今のコーデリクに扱う事はできないだろう。


 しかし、だからどうだというのだ?


 今の自分に扱えないというのなら、扱えるように鍛錬を積めば良い。


 思えばコーデリクは、生まれた時から強者であったが故に、自分を鍛えるという事をしたことが無かった。


「よろしく頼む……アンタが装備を鍛えている間に、俺は自分を鍛え直そうと思う」


 強くなる。


 圧倒的な強者で在ったが故に考えたことも無かった。


「ふーん。なるほどね。わかった、ボウズの装備を鍛えてやろう……お代は後払いで構わねえ、テメエがどこまでやれるのか、アタシに見せて貰おうじゃねえか」


 ニヤリと獰猛な顔で笑う魔鉄。


 彼女はジロリとコーデリクの体を見回すと、手招きをした。


 近寄ると、魔鉄は何も言わずにコーデリクの負傷している右手を掴む。結構な力で掴まれているが、神経がいかれているのか痛みは感じない。


「ボウズ、右手はどこまで動く?」


 その問いに、コーデリクは首を横に振る。


「全く動かない。もうこれは飾り物だな」


 コーデリクの言葉に、魔鉄は何かを考える様子を見せる。


 しげしげと彼の腕を観察し、手で触ってサイズを確かめているようにも見えた。


 やがて満足したのか、魔鉄は手を離しコーデリクに意地の悪い笑みを向けた。


「動かねえ腕なんて邪魔じゃねえかい?」


「……何が言いたい?」


「いや、なにさ」













「その飾り物、捨てる勇気はあるかい?」





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