第21話 造られた魔法使い


 シンと静まりかえった夜深く。


 死屍累々の平野、戦場跡。


 ゆっくりと起き上がる人影が一つ。


 わずかな月明かりが照らしだしたその人物は、死んだはずの ”死神”だった。


 彼は大魔法使いロイ・グラベルにより造られた人工の魔法使いだ。


 人工魔法使いとは、読んで字のごとく魔法適正の無い人間を改造し、無理矢理魔法使いにしてしまうというとんでもない実験の産物である。


 彼は両手に装備した指輪型の魔法触媒の他に、体内に複数の魔法触媒を埋め込まれている。


 大抵の人間は、体内に触媒を埋め込んだ拒絶反応で死んでしまうのだが、わずかながらその実験の成功例も存在した。


 ”死神”と呼ばれる彼こそが、数少ない実験の成功例の中でも戦闘向けにカスタマイズされた殺戮マシーン。


 彼の持つ魔法触媒の中でも最も強力なモノが、その心臓部に埋め込まれた ”祝福されし完全” と呼ばれる秘宝だ。


 宿主が致命傷を受けた瞬間 ”祝福されし完成” は自動的に発動し、体の生命力を吸い上げて強制的に回復・再生の魔法を発動する。


 故に、死神は体内の秘宝を破壊されない限りは死ぬことができない。今回はダメージが大きすぎて再生に時間がかかってしまったが、通常なら数分で大抵の傷は完治してしまう。


 目を覚ました死神は考える。


 自身に致命傷のダメージを与えた戦士の事を。


 あの戦闘能力……否、耐久力は異常の一言だった。いくら雷を当てても怯まず、奥義である闇魔法を発動しても止まらなかった。


「あの男は危険だ……近い将来、必ずグラベル家の驚異になる」


 ならば自分はどうするべきか……。


 答えが出るまでの時間は短かった。


 自分はまだ生きている。そして先の戦闘での後遺症は無い。


 対して相手にはかなりのダメージが残っている筈だ。


 その傷が完全に癒える前に、どんな手を使ってでもトドメを刺す。


 グラベル家に仇なすモノ、その一切を許しはしない。


「コーデリクとか呼ばれていたな……待っていろ、この ”死神” が必ず貴様の命を刈り取ってくれる」


 夜は静かに更けてゆく。



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