第20話 決意





 助けられなかった。


 死なせてしまった。


 何故助けられなかったのか。


 弱かったからだ。



 自分に力が無かったからだ。


 あの魔法使いなどものともしないくらい、


 魔法など問題にならないほどの、


 絶対的な力。



 ”世界を穿つほどの力”



 足りない。


 今の自分には全然足りない。

 

「いや、しかし凄い回復力ですね。明日には動けるようになりますよ」


 ベッドの上で、医者の言葉に頷く。


 雷の魔法による全身の火傷と、闇魔法によって右半身の肉が大きく抉れていた。


 残念ながら右手はもう使い物にならないらしいが、どうやら明日には動けるようになるらしい。


「動けるようにはなるでしょうが、酷い怪我ですからね。しばらくは入院してください」


 医者の言葉を聞き流しながら、コーデリクは一つの決意を固めていた。


 ”グラベル家への復讐”


 レイアの命はもう戻らない。そんな事はわかっている。


 しかし胸の内に宿ったドス黒いこの感情は、どうしても押さえ切れそうになかった。


 あぁ、自分は復讐の鬼となる。


 そして、グラベルの家を潰すまで、この胸を満たす感情は決して消えない。


 しかし今の自分には力が足りない。


 魔法すら寄せ付けないほどの、圧倒的な力が必要だ。


「…………魔鉄」


 ポツリと口から出てきたのは、かつて自分の人生を変えてくれた放浪の鍛冶師の名前。


 動けるようになったら彼女を訪ねよう。


 きっと彼女なら、今の自分に道を示してくれる。


 そんな予感がしていた。


 全身を襲う痛みに耐えながら、コーデリクは目に殺意の炎を宿らせたのだった。





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