第12話 目覚め
目を覚ました。
懐かしい夢を見ていた気がする。
彼の人生の分岐点となった、放浪の鍛冶職人との思い出……。
半分寝ぼけながら周囲を見回す。小さな窓からは、うっすらと陽光が差し込んでいた。夜明けだ。
「おや、お目覚めですか?」
隣を見ると、暖炉の前で火の番をしていたらしいレイアの姿。
「……すまない、見張り番をさせてしまっていたのか?」
驚いた。
まさか自分がこの少女に夜の見張り番をさせてしまうなんて。
「気にしないで下さい、私は大丈夫です。昨夜の戦闘は激しかったですし、疲れがでちゃったんでしょうね」
そんな筈はない。
確かに昨夜、盗賊共を撃退した。しかしコーデリクの体力は無尽蔵と言ってもいいほど桁外れだ。たったアレだけの戦闘行為で疲労するはずがない。
では何故コーデリクはさらなる敵の襲撃を考えずに呑気に寝てしまったのか。
わからない。
何故だかわからないが、こんなに気が抜けたように爆睡してしまったのはエラく久しぶりだった。
「……迷惑をかけた。あまり寝ていないだろう? 俺が見張っているから少し寝ると良い」
「そうですか? ではお言葉に甘えて少し寝させていただきますね。出発の時間になったら起こして下さい」
そう言うと、レイアはごろんと横になってすぐに寝息を立ててしまった。
大丈夫とは言っていたが、彼女は元貴族の娘だ。夜の見張り番など初めての経験だっただろうし、しかも最初から交代無しで一晩見張りをさせてしまった。疲れはかなり溜まっていたのだろう。
その寝顔は穏やかで、安心しきっているようにも見えた。
(……調子が狂うな、どうも)
誰かと供に旅をするなんて初めての経験だ。
ずっと一人だった。
生まれてから、今まで、ずっと。
(……俺は何故、この依頼を受けたのだろうか)
護衛の任務なんて、普段の自分なら引き受けるはずもなかった。
しかし、あの時あの場所ではこうするしかないように感じられたのだった。
(まあ、引き受けてしまったものは仕方が無い。途中で投げ出すような事はしないさ)
レイアの寝顔を見ながら、コーデリクは夢で見た故郷での出来事を思い出した。
”世界を穿つ”
魔鉄はそう言ったが、今の自分が ”世界を穿つ” ような戦士なのかはわからない。彼女は、コーデリクに何を期待していたのだろうか?
窓から差し込む柔らかな陽光が、彼の大きな背中を静かに照らしていた。
◇
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