第11話 夏祭り 続


「ん、おいし」

 葵は横でわたあめを食べていた。

「1口いる?」

「いる」

 横からかぶりついた。

 ん、美味いな

「それにしてもあの2人上手いこといなくなったよねー」

「そうだな」


 恭弥と角積さんはいつの間にかいなくなっていた。

 気づいた時には周りを見てもどこにもいなく恭弥からLINEが来ていた。


『がんばれ』


 うるさいわ。

 何をがんばれって言うんだよ。

 葵の方にも角積さんからLINEが来ていたようで


『やっぱり2人きりの方がいいでしょ?』


 これは探しても無駄だしあの2人だってカップルだ。

 2人きりで回った方が楽しいのだろう。

 結局いつも通りになったというわけだ。

 恭弥のやつ覚えとけよ。


「あ、りんご飴だ。翔馬いこいこ」

「お前さっきから食ってばっかだな」

「う、うるさい。明日からダイエットするもん」

「楽しみにしてるわー」

「何その感情の無い棒読みは。どうせやらないと思ってるんでしょ」

「よくわかってるじゃん」

「翔馬のことはなんでもお見通し。じゃなくて!」

 葵も祭りでテンション上がってるな。

 俺もだけど...。


「そろそろ移動するか」

「あ、もうそんな時間か。過ぎるの早いね〜」

「そうだな」

 花火が上がるまで10分をきった。

 そろそろ花火の見えやすい高台に移った方がいいだろう。


 高台にはもう多くの人がいた。

「もうこんなにいるんだ」

「ほんとだな」

「ここら辺でいいんじゃない?」

「どこも同じだろうしな」


「ドーーーン、ドンドーン」


「お、始まった」

「わ〜、キレー」

「.....ツ!」

 花火より横で無邪気に喜ぶ葵の笑顔に見とれてしまった。

「ん?どうしたの?」

「い、いや、なんでもない...」

「ならいいけど」


 ふいに見せる葵の無邪気な笑顔にいつも心を奪われる。

 こいつ無邪気に笑った時かわいいよな


「なぁ、葵」

「ん?どうしたの翔馬?」

「いや、なんでもない」

「変な翔馬。」


 けど、素直にかわいいとは言えなかった。



「ねぇ、あれ、凛ちゃんたち?」

「あ、そうだな」

 花火の帰り道。

 駅まで歩いていると前に見知った2人が仲睦まじく手を繋いでいた。

「おーい。凛ちゃーん」

「いや、葵やめとこうぜ」

「それもそうだね」


 俺たちと別行動したのは単純に俺と葵を2人にするって目的もあっただろうけど。

 結局あいつも角積さんと2人で花火を見たかったんだろう。

 だから、ここは話しかけずに後ろから見守っていよう。


「ほんと、あの2人ラブラブだね」

「そうだな」

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