第10話 夏祭り


「あ、凛ちゃんこっちこっち〜」

「葵ちゃーん。ごめんね待った?」

「いいや〜全然待ってないよー」

「よ、翔馬」

「おう、お前浴衣似合うな」

「翔馬が褒めてくるとか珍しいなぁ。そんなに似合ってる?」

 こいつなんでも着こなすんだよ。


 今日の祭りはみんなで浴衣を着ることにしていた。

 発案者は角積さん。

 せっかくだからということらしい。


 横では女子2人がお互いの浴衣を褒めあっていた。

「凛ちゃんその浴衣すごくかわいい」

「葵ちゃんも似合ってる」

 浴衣姿の女子2人。

 うん、いい絵だ。

「よし、じゃあ行くか」

「そうだな」

 4人横一列に並ぶと邪魔なので前に恭弥と角積さん、後ろに俺と葵という配置になった。

 前ではカップルが仲睦まじく肩を並べて歩いている。

「あの二人相変わらず仲良いね」

「そうだな」

「私たちもさ傍から見たらあんな感じなのかな?」

「カップルに見えるって事か?」

「そうそう」

「あそこまでくっついてはないだろ」


「じゃあくっつく?」

「は?」


 何言ってるのこの子?

「傍から見たらどう見えるかの実験だよ」

「その実験やる意味あるの?」

「それはやってみてからのお楽しみ」

 ウインクを決めている。いや、ウインクなんか普段やらんだろ。

「それにさ、人多いし」

「まぁそれは確かに」

 城西でのこの祭りは俺たちの地元では有名な祭りだ。

 それもあって毎年人が多い。

 確かにはぐれるのは良くない。けどくっつくのはちょっと...。

「あ、もしかして恥ずかしい?」

「そんなことはないぞ」

「そんなに照れなくても〜。もう、翔馬ったらウブなんだから〜」

 すぐ調子に乗る。

「ほら」

「え!」

「自分から言い出したんだろ」

 俺は左手を葵に出していた。

「それともなんだ、恥ずかしいのか?」

「そ、そんなことは」

「しょうがないな〜。葵はウブなんだから〜」

 さっきの葵の声まで真似てみた。

 どうやら効果抜群のようだ。

「そ、そんなことないしー」

 俺の左手は葵の右手に拐われた。

 指と指を絡めている。いわゆる恋人繋ぎだ。


「........。」

「........。」


 お互いに顔を真っ赤にしてそっぽを向いている。


「後ろでナチュラルにイチャついてやがるよ」

「あれで付き合ってないって信じられないよねー」


 2人は恥ずかしすぎてその声は聞こえていなかった。

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