第4話 訪問者



朝、子猫を助けた。

学校へ行く道の途中にある橋。そこを渡っていた時一匹の猫が板に乗って流されてきた。

見ないふりで通り過ぎようとしたが、子猫の乗っていた板が壁面にぶつかり子猫は川に飲み込まれていった。

咄嗟に。本当に考えるより先に動いていた。

猫はサイコキネシスの力によって川から引き上げられ俺の腕の中に収まった。



周りには誰もいなかった。その時はそう思っていた。

だけど……。



おととい転校してきたクラスメイトの真田圭介。

       こいつが見ていただなんて…………。










「あーーー、うーーーーーー……

    あ~~~~~~、、、、、、、っ」


勇太はスマホを握り締めながら言葉にならない声を出していた。部屋の中を行ったり来たり。ぐるぐると歩き回る。



「叔父さんに何て言おう……また転校になるかもしれないだなんて……言えない……っ」



昨日クラスメイトに力を見られれしまった事を知り、再び転校への不安の予感を募らせる。

「前の学校だってちょいバレて騒ぎになって転校して…まだ半年だぜ…?いい加減叔父さんに見限られる……」

勇太は深いため息をつく。

今日は学校も休んだ。一体どんな顔であのクラスメイトに会えばいいのか……



 『あんたが気に入った。友達になりたいと思ってる』



昨日言われた言葉が蘇る。

(嘘だ。最初は皆そうだ。面白がって付き纏う。それが次第に恐れて非難し離れていく……)

(きっとこいつだってそうだ。)

(もしかしてもうクラスでいや、学校中で噂になっているかもしれない)


「あ~~~~~俺の馬鹿野郎っ!」


どうにもいかなくなりベッドに倒れ込むと自己嫌悪にどっぷりと沈む。



   ピンポーン。



そんな折、インターフォンが鳴る。

「! も、もしかしてももう退学してろって学校の先生が……?」

勇太が恐る恐るベッドから起き上がりドアスコープを覗く。そこには……

「…真田、圭介……!」

(な、何しに来たんだ……?)


そこには事の元凶のクラスメイト、真田圭介が立っていた。

(…やっぱり力の事で脅しとかだよな……?学校に知らされたくなかったら金を出せ!とか……?)

何やら良からぬ想像をし絶対開けるものかと、居留守を決め込む事にした。

(なんでここ知ってんだよ~~。先生から聞いて来たのか?早く帰ってくれ~~~っ)

枕を抱え込み息を潜めてそのクラスメイトが帰ってくれるのを待った。

しばらくして再びドアスコープを覗くとそこに圭介の姿はない。

「は~……帰った、か……」


「よう、勇太ぁ」

「どっひゃー!?」


真後ろで声がした。

勇太も知り合いの探偵事務所の所長にテレポートで突然現れて脅かすの得意だったが

脅かされるのには慣れてなかった。

ちなみにこの探偵事務所の所長は勇太の能力の事は知っているのだが

それはまた別の話の時に…


「なななな…、どこから来たんだ!?」

「んー?玄関からやでー」

「鍵かかってたはずだぞ!?」

「あー、ダメダメ勇太ぁ。今時ディスクシリンダーの鍵なんて泥棒に一発でピッキングされるでー?」

といって圭介は器用に曲げられた針金を得意げに見せた。


「え?ピッキ…?何?? え……??」

驚きに口をぱくぱくさせて状況をうまく把握出ていない勇太に圭介がずかずかと言い放つ。

「しっかし情けない姿やなぁ。色気もないし。これじゃ、盗みに入った泥棒も何も盗らんと帰りよるわ」

「う、うっさいなー…つーかなんだよ色気って…関係ないじゃん……」

勇太はよれよれのトレーナーにハーフパンツという姿。それに枕を抱きかかえ恨めしそうに圭介を見上げている。

「……何しに来たんだよ。俺を脅しに来たのか?」

「まぁ、勇太がもうちょっと可愛かったら襲ってやっても良かったけど?」

「はぁ!?何言ってんだお前っ」

「まぁまぁ、いいからいいから。はよ、なんか羽織って部屋出よか」

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