第3話 見られてた
「なんでやろ?」
「何が?」
パンを食べ終え午後の授業開始までまだずいぶんと時間がある。
そんな時間を二人は同じ場所でただだらーんと足をコンクリートに投げ出し空を見上げていた。
空を見たままの状態で圭介は呟いた。
勇太はそんなクラスメイトの横顔を目の端で覗いた。
「最初はかなり打ち解けているんやと思うてたけど……違うんやな。」
「?」
「おかしく思われない程度に溶け込んでいるだけ。ほんまは友達なんて誰一人おらんのやろ?」
「なんの話?」
勇太が身を起こす。
「勇太。お前のことや」
圭介も身を起こすと勇太と目が合った。その目には誰から見ても動揺の色が見えた。
「な、なんで急にそんな事言い出すんだよ」
「わかるんや。俺もそうやから。ま、お互い季節はずれの転校生。秘密のひとつふたつあってもおかしない。そうやろ?」
「ひ、秘密なんて……っ」
「まぁ、話たかないなら無理に聞こうとは思わへん。ただな、これだけは知ってて欲しい。
俺は、あんたが気に入った。友達になりたいと思ってる。お互いどんな秘密があったとしてもな。
……まぁ、逆にあんたが俺の素性を知って引いてしまうかもしれへんけどなぁ。はははっ」
「……。」
勇太はただ黙って聞いているしかなかった。早まる心臓を抑えるが精一杯だった。
それから圭介は「じゃあな」と手を振りその場を後にする。
屋上の昇降口の扉に手をかけた時に「あ、」と小さくつぶやく。
「猫、助かって良かったなぁ。俺も猫、好きやし。」
「!!」
そのまま圭介が階段を降りて姿が見えなくなるまで勇太は凍りついたように動けなかった。
(―見られてたんだ……。俺が力を使ったのを……っ!)
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