第112話 元おじさん・・・商業ギルド・1



 ・・・昨日おじさんは神殿で色々あったのだけれども、現在は商業ギルドのギルドマスターの執務室でギルマスの老女と対面しています・・・どうしてこうなった?


「良く来たねぇ、歓迎するよ! クロウ殿、あるいはエターナル殿とお呼びした方が良いかな?」


「クロウとお呼びください、商業ギルド・ギルドマスターロザリア様!」


「かっかっか! 敬称はいらないよ、ロザリア婆さんとでも呼んでおくれ! これでも200年は優に超える人外婆じゃからのぉ。」

 ニコニコと楽しそうに笑う老女、その横で頭を抱えながら秘書の金髪メガネ美人さんが諌めようとする。


「ギルマス! あまりおふざけにならないで下さい、クロウ様も困っております。」


「やれやれ、うちの秘書は真面目でねぇ・・・もう少し可愛げがあると男達も取っ付きやすいだろうに、ふぅ。」


 !?


「ギルマス~! 何かおっしゃりましたか?」

 怒気の見える笑顔をギルマスに向ける秘書さん。


 それを物ともせずにロザリア婆さんは紅茶を飲み干すと。

「可愛い玄孫に早い内に来孫の顔を見せて欲しい婆のたわ言だよ、聞き流しておきなシャリー。」


「な! 大婆様! 職場では止めて下さい! もぉ~!」

 耳まで顔を赤くするシャリーさんかわいい!


「話がそれてしまって悪いねぇ、無理を言って呼んだのには訳があってねぇ、話を聞いてもられえるかい?」


「・・・内容にもよりますが、悪い話とかですか?」

 この手の交渉事は得意では無いので不安だ。


「何そんなに警戒しなくても良いよ、まぁ幾つか話はあるのだが、まずはクロウ殿の商品登録及び商品契約についての話についてだねぇ。」


 ごくり! 何か問題があったかな?


「いやぁ、実に素晴らしい成果だよ! 評判も良いし儲かっている! それにこちら(商業ギルド)に全て任せて貰っているから余計な横やりも無いから円滑に事が進んで良い商いをさせてもらっているよ!」


 ほっ、問題は無い様だな・・・ラヴィ、何か違和感や異常があったら知らせてくれ! 自分はこう言った腹の探り合いは苦手なんだ。


「了解しましたマスター! 失言や言質には御気を付け下さい。」


 了解! わざわざ自分は人外だぞと忠告してくれているのだから素直に聞き入れて置かないとね。


「これがクロウ殿の税金分を引いた預金残高だ、確認しておくれ。」


 そう言って秘書さんから渡された書類を見ると9桁の預金残高が記されていた?

 首を傾げて再度確認したがやはり9桁だった。


「まぁ、契約通りそちらの受取額は1割だが実際に数字で見ると少なく見えるだろうが今現在だとそんなものだね。」


 あっ如何やら金額が少ないと思っている様に思われたか?


「いえ、十分な金額です! 思ったよりも好調な様でしたので驚きました。

 此方の取り分に関しましても商業ギルドの組織の大きさと販路や人脈、職人への伝手や知識をお借りするのですからこの金額で十分です。

 欲をかいても碌な事は無いですから。」


「かっかっか! 商品が良かったからねぇ! まさに飛ぶ様に売れているよ! また良い商品や案があったら遠慮なく相談して来なさい!

 それにそう言ったクロウ殿の考えには好感が持てるが世の中には欲望が人の姿をしている連中もおるから無欲な態度は時としては狙われたり騙される事も在るから相手を良く視て使い分けなさい。

 なんなら、うちに婿に来るかい? わしの孫達は美人揃いじゃぞ!」


 楽しそうに目を細めるロザリア婆さんを見ながら、近所に居たやたらとお見合いをすすめるおばちゃんが居たなと思い出すが、この場合は此方の反応を楽しんでいるなと直感した。


「大変に魅力的な御誘いですが、まだまだ遊び回りたい年頃ですので御遠慮させて頂きます、申し訳ありません。」


「かっかっか! かまわないよ、単なる年寄りの冗談さね!

 さて、冗談はここまでにして、ここからはクロウ殿にはしっかりと聞いて貰おうかのう。

 今回大きな利益が出た事でその利益に集るダニ共が出てきてのう、この先接触して来るかも知れないから覚えておくと良い。」


 ・・・そう言った連中からの隠れ蓑にする為に商業ギルドを利用したのだけれども全てを防ぐのは無理なのかな?


 その後詳しい話によると、商業ギルド本部に神聖メルディオス帝国の貴族が押し掛けて来てこの様な事を告げて来たらしい。


「今回商業ギルドで売り出されている遊具の数々は本来我が国が秘匿にしてきた物であり、それらの起源は神聖メルディオス帝国の物である!

 即刻売り上げの全てを此方に渡し、再度商品を売りたいのであれば使用料として利益の8割を支払え!」と頭のおかしい事を騒ぎ立てた貴族がいたらしい。


 その後その自称貴族さんは他国で騒ぎを起こし衛兵に捕らえられて収監されたらしい、本来であれば他国の貴族にこの様な扱いはしないのだが、神聖メルディオス帝国の貴族は色々と他国でやらかしている為、入国を禁止いている国もあり、国境に面している小国ならまだしも大国辺りでは問答無用で処罰するらしい。


 実際に帝国から苦情は来るが、大国に対してはあまり大きな態度が出来ないようでその代わり国内では尊大な態度と国民の洗脳に力を入れているので国外に出た貴族(キチ〇イ)が必ず問題を起こし帝国の立場を悪くしていくのだそうだ。


 そう言えば以前ダンジョン攻略中にラヴィが帝国の事を説明していたな・・・あれ? そう言えば転移前にドゥジィンさんもそれらしい国の事言っていた様な・・・禁術で異世界召喚企んでいる国だったかな? まさかね・・・。

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