第110話 元おじさん・・・チ〇ットスナギツネの顔の様な心境になる。



 フロントダブルバイセップス・ファーシス像を目撃したおじさんは直ぐ様この場から逃走しようと振りかえると・・・歓喜の涙を流して祈りを捧げる神殿関係者らが退路を塞いでいた。


 直感でヤバいと感じたが、集団の先頭で祈りを捧げている年配の男性と目が合ってしまった。


「どうもこんにちは、いやぁ珍しい事も在りますねぇ、自分これから用事がありますので失礼しますね!」


 おじさんは逃げ出した!   しかし回り込まれた!


「お お待ちください! ご迷惑でなければこちらで別室を用意いたしますのでお話をさせて頂けないでしょうか?」


 ああ、これは逃げられないなと思った、今更遅いが少しでも目立たないように案内に従った。


「御心配には及びません、この場にいる者達はあなた様について他者に漏らすような不心得者はおりませんから!」


 こちらの心配事を察してくれたようだが、なんか怖い。


 案内された応接間は清潔感があり圧迫されるような豪華さなどもなく、何と言うか落ち着く様な感じの部屋であった。


 応接間に案内され席に着いた、すると直ぐにお茶を持った女性が現れてテーブルに笑顔でそっと置いたくれた、おじさんも気後れしない様ににこやかにお礼を言い、失礼ではあるがお茶に鑑定をかけた、問題がないのを確認してから一口飲んだ。


「報告します、室内に潜んでいる者はおりません、扉付近に警護として2名居ますが部屋に対して聞き耳を立ててはいない様です、予防線として防音魔法を掛けますか?」


 ラヴィの報告と提案を聞いて重要な話になりそうならそうしてくれと頼んでおいた。


「この度はわたくしの無理を聞いて頂きまして有難う御座います。

 そして、ダンジョン完全攻略おめでとうございます! クロウ・クローバー様」


 ああ、やっぱりバレてるか!


「有難う御座います、ですが出来れば内密にして貰いたいのですが」


「もちろん他に漏らすような事はわたくしの命に懸けても致しません! 知っているのは神殿内でもわたくしのみで御座います!」


 真剣な面持ちで語る男性は何かを思い出すように慌てて話し出す。


「申し訳ございません、浮かれてしまいわたくしの事を一切お話ししておりませんでした。

 わたくしはこの神殿を管理しております、神殿長のエイメンと申します」


 自己紹介とともに深々と頭を下げるエイメンさん、なぜそこまでするのか分からないおじさんは少々困惑気味だ。


 そんな困惑気味の自分にラヴィが追加の情報を持って来た。


「報告します、只今絶賛ポージング中の御神体彫像様ですが時間経過と共にポージングが変化するそうです、このまま次々とポージングを続けた後に元の姿の彫像に戻るそうです、一応関係者の方に伝えた方が良いかと思われます」


 ・・・なるほど、どうせ騒ぎになるのであれば今のうちに騒ぎを起こしておけと言う事だな! よし任せろ! どうせ神様経由の情報だろうし大事の一つや二つ増えても今更だろう! 


 こうして、その情報をエイメンさんに伝えると、「カッ!」と眼を見開いて席を外す事を此方に伝えると電光石火の勢いで神殿職員達に指示を出しに向かった。


 微かに聞こえる指示の内容に「記録」とか「絵師」とか「緊急最重要事項」とか「筋肉」とか聞こえて来たが、お茶を飲みながら気長に待つ事にした。


 あとついでにラヴィに各種ポージングの名称と当たり障りのない掛け声の掛け方を資料としてまとめて置いて貰った、だがこの時の自分はこの行為が後にどの様な結果をもたらすのか予測していなかった。


 お茶を3杯程飲み終えた頃に、やり切った顔で戻って来たエイメンさんが、此方を見て急に顔色を変えて平謝りして来た!


「申し訳ございません! 我を忘れてクロウ様の事を長い時間お待たせしてしまいました! この様な失態、わたくしはいかような罰も甘んじて受けます! どうかわたくしに罰を!」


 怖い怖い! ちょっと怖いよ! とりあえず落ち着くようになだめたが必死に罰を求めるエイメンさんの熱意が怖かった。


 長い押し問答の末ようやく落ち着いたエイメンさんとまともな会話をする事が出来た。


 簡単にまとめるとエイメンさん以外のこの街の神殿関係者は石碑の神世文字を読む事は出来ないらしい事、ただし一部の教会上位者や神に特別な加護を与えられた者は読む事は出来るらしいが他者に伝える事を禁じられているそうだ。


 ただし関係する本人自身に話す事やその本人から他者に話す事の許可が下りた場合はその限りではないそうだ。


 その後エイメンさんにこの街で神世文字が解読出来るであろう方々の名前を教えてもらい今後に備えることにした。


 エイメンさんとのお話し合いだが簡単にまとめると如何やらおじさんの事をファーシス様の使徒と勘違いしていた様だったので懇切丁寧にたまたまご縁があっただけで使徒では無い事を伝えたが、エイメンさんは優しく諭す様に語り掛けて来た。


「クロウ様、神々との出会いに偶然は無いのです、全ての出会いは必然なのです!

 そう!今回クロウ様がこの神殿に訪れた事もファーシス様の彫像に起きた奇跡も神の導きなのです!」


 前言撤回、優しく諭す様に語り掛けて来たのは最初だけでした後半からは興奮気味に語っています。


 エイメンさんの熱意の籠った説法を聞きながら明日の行動予定はどうしようかなと若い頃に身に着けた『真面目に聞いている様で全く別の事を考える』を発動させてその場を凌ぐ事にした。



 早く終わらないかな~。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 お久しぶりです。

 更新が大幅に遅れましてすみませんでした、言い訳としましては物語の内容は出来ているのですが、上手く文章に出来なくなりまして四苦八苦しております。

 更にリアルが忙しくなりまして中々執筆に時間が取れません。


 自分としてはまだまだ続けていくつもりですが、リアルが落ち着くまでは不定期の更新になります。

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