第109話 元おじさん・・・叫ぶ!



 昨晩、新たに増えた悩みの種を抱えながら、迷宮都市観光をしているのだが、周囲の視線がわずらわしい!


 原因は分かってはいる、自分の背後でワイワイしているチャチャ達に注目が集まっているのだ、人混みの中を連れて歩くのは、もしもはぐれたり、家の子が可愛すぎて連れ去られたりしたらおじさんついこの街を更地に変えてしまいそうなので、背負い型の収納ケースに3匹を入れて街中をウロウロしている。


 ・・・でもいざという時に動きが阻害されるから専用の運搬ゴーレムでも用意した方が良いかな?


 人型の筋肉質型なら威圧感が在ってちょっかい掛けて来ないだろうし。


「意見します、一般の方はそれで良いでしょうが、それ以外の自意識の高い方々にはかえって目立つと思いますよ」


 そうだろうか?


「目立つ事を好む相手からですと、そう言った珍しいゴーレムは自身の引き立て役や他者への自慢をする為に欲すると思われ、拒否いたしますと強引に奪おうとするかもしれません」


 じゃあ認識阻害をもう少し強めに掛けるしか無いかな? お店とかも色々と物色したかったけれどこう目立つとなぁ。


「意見します、チャチャ達をマヨヒガで待機させて、マスターが一人で行動為されば問題が解決するのでは?」


 う~ん、自分としてはこういった観光をチャチャ達にも楽しんで欲しい思うんだがみんなの意見はどうかな?


「にゃあ~」「みゃあ!」「きゃん♪」 留守番しているので気にするなと言われた。


 あれ? 此方の方が色々と依存していたかな?


「回答します、依存というよりはマスターは気を使い過ぎています、たまには距離を置く事も大切です」


 ああ、そういえば前世でチャチャを構い過ぎて暫く寄って来なくなった時期が在ったなぁ。


 連れ回すのは本人達の気分次第にした方が良いか、そうとなればスキルで姿を隠してから人目の無い裏路地でチャチャ達をマヨヒガに移動させてから街を観光して周るかな。


 その後一人だ行動を始めたおじさんは、生前から独り行動は慣れているので露店を覗いたり、商店で買い物をしたり、ガラの悪い連中に絡まれてそれを無言で撃退したりして、気付くと神殿の近くを歩いていた。


 印象としては白を基調とした小規模な西洋風の御城の様な外観だった。


 入り口付近で清掃をしている関係者らしい女性に挨拶をして、神殿でのお祈りの作法などを聞いてから御礼を言い神殿へと歩を進めた。


 神殿に入って真直ぐに進むとこの世界で有名な神々の彫像が正面に並べられており、センターにはあまり似ていなかったが創造神ファーシス様らしき彫像が祭られていた。


 さてと・・・予想は付いてはいるけど祈りますか、教えて貰った作法で祈りを捧げてみた・・・・・・一瞬の浮遊感を感じて目を開けると、眩しい笑顔でフロントダブルバイセップスをポージングファーシスさまが居た!


「ナイスバルク~!」そう掛け声を掛けた!


 すると嬉しそうに今度はフロントラットスプレッドへとポーズを替えて来たので。


「切れてる! 切れてるよ~!」さらに掛け声を続けた!


 その後はファーシス様が満足する迄、知っている限りの掛け声をかけ続けた!

 ・

 ・

 ・

「いや~、やっぱり久道君、いや今はクロウ君だったね、キミからの反応が今は一番うれしいね!」


「喜んで貰えて何よりです、自分も御陰様で楽しい時間を過ごしていますから感謝しています」


「そう言って貰えると私も嬉しいよ! 何せ君の担当のドゥジィン君は結構お茶目だから何か困った事は無いかと心配していたんだ」


「いえいえ、そんな困った事なんて色々と御尽力して頂いておりますので感謝こそすれ迷惑な事等在りませんよ」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・×2


「さて堅苦しい話はここまでにしてこの前は悪かったね、まさか軽い気持ちで話した事が試練に為るとは思わなかったんだ」


「いえ、始めは確かに驚きましたが、後々にはそこで得た経験が助けになりましたしその後に十分過ぎる程の報酬も頂いてますから」


「そう言って貰えると助かるよ、あの後ドゥジィン君やシェルシア君にルーシア君から散々怒られて大変だったよ!」


「大変だった様ですね?」


「まあね、幾ら神々のトップでも女神達を怒らせると怖いのだよ・・・クロウ君は、私達の世界ルドラガで生活してみて如何かな楽しめているかい?」


「・・・そうですね、今まで居た世界とは全く違う異世界で肉体は若返っても未だにおじさん気質は抜けないですし、マヨヒガに慣れてしまうと此方の衣食住はかなりきついですし、スキルやアイテムも有り過ぎて使いこなせていないです。

 でもファーシス様が創られたこの世界に来れた事は本当に良かったと思っています!

 ありがとうございます! ファーシス様!」


 自分が出来る最大限の気持ちを込めて御礼を言った!


 その言葉を聞いてファーシス様は直視出来ない程の満面の笑顔で微笑んだ!


 超美形の笑顔は本当に凶器だわ!


 その後は、幾つかの世間話をした後に時間となり意識が本来の場所へと戻り始めた。


「では、クロウ君また遊びにおいで、楽しみに待って居るよ!」


 そう告げられたが、そんなにホイホイと来て良い所では無い様に思えるのはおじさんだけだろうか?



 気が付くと先程迄祈りを捧げていた場所の様だ、戻って来たと視線をファーシス様の彫像に向けるとそこには?


 フロントダブルバイセップスのポージングしたファーシス様の彫像が在った!


 ・・・・・・・・・・・・・何をやっているんですかファーシス様!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る