第108話 元優等生さん・・・戸惑い悩む。



 俺の名前は大居悟(おおいさとる)、現在『神聖メルディオス帝国』に所属している。


 本来の希望では此処には召喚されたくはなかったが、くよくよしていても仕方が無い、今はいかにしてこの国から逃げ出すかを考えなければならない。


 俺は召喚される前の事を、『神託の間』で色々と小細工をしておいたのであの場所で何があったのかも、本来であれば召喚組が消去された記憶も記録としてスキルに残してある。


 記録として残されていた俺からのメッセージは、自分自身の安全を確保する為に必要なスキルを習得するには初回限定Pポイントだけでは足りなかった事から召喚組を選択する事でポイント無しで職 業ジョブを習得して不足分を補う事にしたとの事だ。

 

 そして俺を担当していた女神様がそういった創意工夫をしながら足掻あがく人間に好感が持てるそうで色々とスキルのアドバイスや無料で色々な情報を教えてくれたらしい。


 そのおかげで、職 業ジョブも賢者を習得して魔法関係で必要なスキルもほぼそろえた、さらに耐性スキルも危険なものから優先的に習得しておき、鑑定系も看破や解析等が有るので大抵の事は見抜けるだろう。


 何せ召喚された当初から精神支配系の魔法や思考低下のお香に魅了効果のある香水とマジックアイテムをふんだんに使用して来るのだから呆れてしまう、そして止めとばかりにハニートラップを仕掛けて来た!


 まぁ丁重にお断りしたが、あのバカ3人は見事にハマっていた。


 翌日にはお互いに自慢話をしていた、罠だとも知らずにご苦労な事だ。


 その後は、お姫様方の代表の一人であるマルガリア・ニア・メルディオスの指揮の下、細かな説明や帝国の帝王コンニダリア・ニア・メルディオスとの謁見、その後も考える暇を与えずに様々な行事に連れ出されて、そして疲れた所にしつこく添い寝と称してハニートラップを仕掛けて来る、しかも「我々の国では当たり前の事なので、お気になさらずどうぞ」とか、どうぞじゃねえよ!


 近くに人が居ると気になって寝むれないので結構ですと断りながら、寝室には常に鑑定で見つけた隠し通路の出入口に結界を張って夜這い対策をしたり、あちらこちらに仕掛けられた精神干渉系のマジックアイテムの解除などをする日々。


 お陰で魔法系や鑑定系のスキルレベルがメキメキと上がりその過程で新しいスキルも習得した!


 ・・・あまり良い事では無いのだが、只々勉強だけしていたあの頃よりも充実していると思う、何せ命懸けだからね!


 最近、マルガリア・ニア・メルディオスが頻繁に絡んで来る、ただその代わりに他の女性が寄って来なくなった、恐らくはマルガリア単独で誘惑する方針になったのだろう。


 う~ん、マルガリア嬢の意図が判らない? 頻繁に近くに居るのだがある程度の距離感を持って接して来る、バカ3人組の周りに居るお姫様方は何処でもベタベタイチャイチャとしているが、現在俺達が居る魔導書の書庫ではマルガリア嬢は邪魔する事無く色々とサポートをしてくれる。


 ・・・勉強ばかりで恋愛経験の無い俺としては戸惑ってはいる? あからさまに魅了やら夜這いなどをして来たと方が対処し易かった! マルガリア嬢に鑑定を使用しても何かしらの工作をしようとする痕跡も全く無く戸惑う日々だ!







「お父様、こちらが今週分の報告書となります」


「そうか、後で確認しよう・・・それで状況はどうだ?」


「はい、現在五十嵐一矢様、鈴木賢士様、佐々木乃夫様は順調に洗脳が進んでいます。

 それと並行して、王族血縁者との性交も問題無く進行しています。

 すでに4名の妊娠を確認しています」


「うむ、順調のようだな選ばれし我らの血脈に新たな血脈が注がれる!

 実に素晴らしい!

 残念なのは、今回は男ばかりで女が居なかった事か、もし女が居ればこの帝王自らが我が血脈を注ぎ込んだのに!

 マルガリア、次の召喚は何時行える!」


「魔力供給の為に用意しました魔導士2,000人を今回の召喚で9割以上を魔力枯渇で死なせました。

 ですので次の分が育ちます迄、最速で10年は掛かります」


「くっ! それでは遅い! どうにかならんのか!」


「そうなりますと他国から有望な者を誘拐するか、あるいは魔導都市に攻め込み魔導士を奴隷として捕らえるかでしょうか」


「・・・誘拐は良いが、魔導都市を攻めるのはまだ早計だ、異世界人の洗脳と強化が確実なものにならないと迂闊な事は出来ん!

 ん? そう言えばマルガリア、お前が単独で担当している男はどうなのだ?」


「はい、大居悟様は時間は掛かりましたが篭絡するのも時間の問題です。

 その分、流石は賢者という事でしょう他の異世界人よりも魔法関係の研究が素晴らしくきっと帝国の力となるでしょう、肉体関係に付きましては私が必ず成功させてみせます!」


「よかろう、だが決して我らの真意を覚られるなよ! 良いな!」


「はい、お父様」


「もう、下がって良いぞ」


 マルガリアが退室するのを確認すると帝王コンニダリアは込み上げる思いを押さえつつ。


「くっくっくっく、ようやくだ! 俺の代でようやくこの時が来た! 決して逃さぬぞこの時を! 俺が全世界の王となるのだ!」


 押さえていた感情が口にした事で溢れ出し、コンニダリアは大声で笑い出す!


 その笑い声は、防音完備がされている為外に漏れる事は無かったがその笑い声は狂気に満ちたものであった!






 コツ コツ コツ コツ コツ コツ コツ コツ コツ コツ


 人気の無い薄暗い廊下を足音のみが聞こえる、そして聞こえる筈の無い笑い声に反する様に静かな殺意を込めて小声でささやく。


「帝国は必ず滅ぼす!」

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