第85話 元おじさん・・・隠れて掃除をする。



 35階層は現在、おじさん達を無視してダンジョンモンスター同士で争っていた。


 無視していると言ってもただ此方こちらに係わっている余裕が無い様だ、状況が落ち着いたら襲い掛かって来るだろう。


 なのでおじさん達はすぐさまストレージから『妖精の衣』を取り出して羽織り、用心の為更にスキルを使用して気配や痕跡を消した。


 当面は状況の確認の為にチャチャ達を抱え背中に背負った状態でこの35階層で何が起こっているのかを解析しようと思う。


 争っている勢力は解る範囲で3つ、ゴブリン、コボルト、アントマである。


 アントマは蟻の様な見た目の妖魔で2足歩行で4本の腕を持つ。


 数ではゴブリン、機動力ではコボルト、手数ではアントマといった所だろうか、それぞれが入り乱れて戦っており完全に乱戦に為っている。


 ダンジョンモンスター同士で戦っても殺されると粒子化してドロップアイテムを落としている、勿体無いなと見ていると一部の武器を持たない者達がせっせと拾っていた。


 如何やらそれぞれの種族で回収係が居るらしく早い者勝ちで回収している様だ、更に回収係は事故で巻き込まれない限りは攻撃を受けていない?


 ただの乱戦じゃない? それなりのルールが在る? ・・・もう少し観察して視ようかな、暫くしたのち生き残った者達が十分なレベルアップをしたのか進化を始めた。


 それぞれ、ゴブリンファイター、コボルトファイター、アントマソルジャーに進化した様だが他の系統にも進化している個体も居た。


 進化したのち回収係から必要そうなドロップアイテムを受け取り階層の中央へと進む、おじさん達も気付かれない様に後を付ける、その際に気が付いたのはどの勢力も争う事も無く、武具の調子を確認したり、魔石をボリボリ食べたりして歩き続けている。


 ・・・脳内マップで判る範囲を調べてみると、35階層の中央をかこう様にダンジョンモンスター達が集まり、その集まりが3層の円形に為っている。


 おじさん達が最初に居たのが一番外側の層でそこから中央に向い幾つかの集団が移動している。


 しばらく後を付いて行くと前方で同じ様な乱戦が確認出来た、すると3種族は確認するやいなやそれぞれの勢力へと駆け出して乱戦の中へと飛び込んで行った。


 ・・・この状況が恐らく後1回か2回は在りそうだな、この2層目で生き残った者が更に上位種に進化して先に進んで、3層目でも同じ事を繰り返して進化して、中央で最終的な決着を付けるのかな?


 最後の一体が35階層の階層主? それとも中央に居る全てが階層主?


 ・・・後者だとヤバくないか、おじさんは急いでマップで中央を索敵したが現在の中央には敵対反応が全く無かった。 あれ?


 ・・・でもこれは意図的に経験を積んだ強い個体を作り出す為の仕組みだよな・・・多分?


 蠱毒に近いと思うが、じゃあ完成した個体は何処に消えた? 絶対に今が初めてでは無いだろうし、各階層に運ばれているとか?・・・ここから先の階層はスゴイ事に為っているって事か?


 ・・・う~ん、これも憶測でしかないよな、実際に確かめないと判らないか。


 よし! 先に進もう3層目の戦場の様子を確認してから中央に向かってみよう。


 2層目の乱戦の隙間を抜けながら多少散らかっていたので戦いの邪魔に為らない様にをしながら先に進んだ。


「問、マスターこの階層の状態を如何いかが思われます」


 ・・・憶測で良いなら答えるけれどもそれで良いかい?


「了、構いません」


 取り敢えず思い付き易いのはダンジョンモンスターを強化する為の階層、外側からリポップした個体が最初の戦場では武器が無いので回収係をする、武器を構えていない者は狙われないのだろう多分。


 次にリポップした同族が到着したら、回収したドロップアイテムの中から武器を選んで戦闘に参加して、進化するまで生き残る事が出来たら次の戦場に移動して同じ事を繰り返す、ただし次からは自分で必要なドロップアイテムを回収しないといけない。


 そして最終的に中央まで辿り着けた個体が如何為どうなるかが分からない?


 ・階層主に成る? 只今までにも階層主が居た筈だ、前の階層主はどうなる?


「解、戦って階層主を決めるか? 共闘して待ち構えるか?」


 ・強化された個体をそれぞれの階層に送る? 上の階層ではこれらの上位個体は確認出来ていないから。


「解、ならば下の階層へと送られている可能性がありますね、止める事が出来るのであれば実行しますか?」


 ・・・可能なら停止させておこう。


 自分の頭だとこの位かな、何処かの名探偵の様にはスラスラと謎に辿り着けないです。


 ラヴィと色々と考察しながら3層目の戦場に辿り着くと数もかなり絞られているのか、それぞれの場所で一対一で戦って、勝てば次の相手を見つけて戦い、その繰り返しを進化するまで続けている様だ。


 この場に居るのは、ゴブリンウォリアー、コボルトソードマン、アントマナイト等が主体で他にも別系統の個体も居るがほぼ倒されている。


 近接が得意な者が残り易いのかな?


 まぁ此処も多少をしてから中央へ向かうとしよう。


 散らばっていたを片付けながら中央に近づくと建造物が見える事に気が付いた。


 警戒しながら近づいてみると草原にポツンと建物が建っていた。


 おじさんは建物の周囲をぐるっと見回して見たが入口は建物の恐らく正面の真ん中に1つだけで窓は無し、形は白い四角形で、例えるなら『豆腐ハウス』かな?

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