第83話 元おじさん・・・こだわる。



 32階層に到着してまず目に付いたのは草原の奥の方にチラホラ点在する。

 林? 森? 高い樹木の様に見えるし近づいてから確認してみよう。


 まずはこの階層のダンジョンモンスターを探してみるとモコモコの羊の群れが居ますね・・・ジンギスカンを食べるのも久しぶりですね。

 鑑定ではスタンプシープと呼ばれる全長2m程の羊らしく、集団で相手を圧し潰しに掛かるそうで、あのモコモコの羊毛に絡まると身動きが取れなくなりそのまま集団で圧殺しようとするそうで、更にあの羊毛には斬撃・刺突攻撃への耐性が有り中途半端な攻撃だと羊毛に武器を絡め捕られてしまう。


 討伐方法としては魔法で攻撃をするか、打撃武器で羊毛の少ない顔面を狙うか、羊毛の性能を超える攻撃で仕留めるか、スキルによって攻撃を無理やり通すか。


 まずは様子見で雷魔法でサンダースピアーを打ち込んでみると命中してから一拍置いてスタンプシープの羊毛が放電し始めた!


 雷魔法が吸収された? いやチョット待て、放電が群れ全体に広がっている!


 ・・・ヤラカシマシタ! あのまま突進されるとヤバいので大地のエンピの地形操作で地面を凹ませて群れ全体を穴に落として閉じ込めた。

 

 穴の中はスタンプシープが這い出そうともがいているがモコモコとした羊毛が邪魔をして密集してしまうと上手く動けない様だ。


「告、マスター如何やらスタンプシープの羊毛はある程度の雷魔法に対して吸収・放電する事が出来る様です。

 ですので確実に討伐されるのであれば吸収容量を上回る雷魔法を使用するか、別の系統の魔法で攻撃するかしかありません」


 う~ん、出来ればあまり損傷の無い様に仕留めたいな・・・水魔法が妥当だな窒息させよう。


 おじさんは水魔法で周囲にいくつものバスケットボール位の水球を作り、スタンプシープたちの顔面に張り付かせた。


「「「「メエエェ~~ゴボベベベェ~~~・・・・・」」」」


 HPが0に成ったスタンプシープから順にドロップアイテムと一緒に回収して行き、穴の中の群れを全て回収し終えると、穴を元に戻して周囲を警戒しながら少し休憩を入れた。


 想定外の事ではあったが元々おじさんが欲張らなければ、もっと簡単に討伐出来ていたよな。


「解、スタンプシープの良質な状態を諦めて火魔法による攻撃で討伐しましたら、ここまで手間は掛かりませんでしたが、マスターとしてはそうでは無かったのでしょう?」


 いや~、勿体無いじゃん! 折角さ、そういう事が出来るのにやらないのは、おじさんはこう何と言うか高価な物はそうでも無いけれど、必需品や日用品に対する収集癖? 物を捨てられない? 勿体無いお化け?

 いざという時の為に残しておきたいだろ・・・今はそれが出来るし。


「解、私はマスターが望む様に行動される事を御手伝い致します。

 ですので、お気に為さらずお進み下さい。」


 ・・・うんありがとうラヴィ! じゃあバレない所では自重しないで行くね!


「・・・一応多少の節度は持って下さい。」


 まぁそうなるよね、程々には気を付けます。


 スタンプシープの羊毛とお肉が多めに欲しいので『雷球ビット』を『水球ビット』に変更してエタローとシオりんの2人にも手伝わせた。


 スタンプシープを狩りながら一番近くの林に到着してみると、おじさん思わず見上げてしまった!


「デカイねぇ!」 「にゃあ~」「みゃあ」「く~ん」


 チャチャ達も同意の様だ・・・そして定番でもあるダンジョンモンスターを見つけた、トレントだ! 周囲の樹木に隠れて擬態してこちらのすきうかがっている。


 この辺りは収集出来る様な素材は在るのかな?


「解、薬草・果実・キノコ・香辛料等が確認出来き、木材も良い物が入手出来ます。

 全て採取、伐採しましてもダンジョンですので1日で元に戻ります。」


 じゃあ、お言葉に甘えて採取はラヴィに任せて、おじさんは風魔法で丸ノコをイメージして高速回転! 『ウインドソー』! 地面を這う様に水平に調整して樹木へ向けて放った!


「チュインッ!」 短い切断音と共に樹木を切断した、切断した樹木は直ぐにストレージに収納され、おじさんは次々と樹木を伐採して行った、ついでにトレントも一緒に伐採した(彼方此方あちらこちらでトレントの悲鳴が木霊していた)。


 そのままおじさん達は草原ではスタンプシープを林ではトレントを討伐しながら、33階層の階段目指して多少蛇行したり休憩したりして進んで行った。


 今回は階段前には異常は無い様だ、でも一応索敵・探索をおこない階段周囲にトラップが無いか調べたが杞憂に終わった。


 降りる前にドロップアイテムと宝箱の確認をしておいた。


 ・魔石(中)

 ・スタンプシープの羊毛:道具・衣類の素材

 ・スタンプシープの毛糸:衣類・マジックアイテムの素材

 ・スタンプシープの角:道具・錬金術の素材

 ・スタンプシープの皮:道具・マジックアイテムの素材

 ・スタンプシープの肉:高級品美味しい

 ・スタンプシープの毛糸衣類:サイズ調整付与付きのセーター・帽子・手袋・マフラー・ベスト等

 ・トレントの枝:武器・杖・錬金術・マジックアイテムの素材

 ・トレント木材:建築・道具・マジックアイテムの素材

 ・トレントの果実:食材・錬金術の素材

 ・トレントの面:トレントの顔面部分の樹皮が仮面に成った物、同じ表情の物は無く装備して森林に入ると危害を加えない限り森林内では魔物に敵対されない。

 但しあまり長く装備し続けると森から帰って来れなく為るかもしれない?


 宝箱は硬貨・ポーション類・武具・マジックアイテム等でその中に。

 ・至高の毛刈りハサミ:どんな毛質でも簡単に肌を傷付ける事無く対象を夢心地の内に毛刈りが出来るハサミ

 ・魔力素肥料(液体)2ℓ×5:水で100倍に薄めて植物に与えると成長速度、品質が格段に向上する


 生産系の掘り出し物は中々嬉しい。


 確認を済ませて、そのままおじさん達は33階層へ下ると、その光景に息をのんだ!


 そこは周囲を森林が囲む湖だった!

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