第63話 元おじさん・・・ダンジョンで行商をする。



 結局の所、ポーションを売りました。

 野盗のアジトで手に入れた中級HPポーションを金貨7枚(70,000パル)ダンジョン価格で売りました、本来は金貨5枚(50,000パル)位だそうだ。


「ポーションを売って頂いて有難う御座います、これで仲間を救えます」

 そう御礼を告げて急ぎ走って重傷者が居る所に向かう男性、・・・礼儀正しい好青年といった感じだ。


「問、マスターの好みですか?」


 違います! 好感が持てると言う意味合いです。 おじさんの好みはこう・・・あれ? 今15歳だよな、相手もそれぐらいの年齢だと・・・ラヴィ、こっちの世界って年齢制限の決まりとか在るの?


「解、あらゆる種族が居ますので年齢や外見の隔たりは当人同士が良ければ問題ありません!」


 そうなんだ、じゃあ犯罪で無ければ問題無い訳だ。


「解、地域や国によって様々ですが決まり事や法律に触れなければ結構グレーです。 逃げ道が色々と用意されています」


 ・・・どこの世界も似た様なモノか。


 あ、そういえば彼等はどうなったかな?


「解、無事ポーションで傷が回復して喜び合っています。 負傷者の男性の彼女も泣いて喜んで抱き着いており、それを眺めつつ双方のカップルも身を寄せていちゃついています。・・・爆発させますか?」


 させません! 良いじゃ無いのいちゃつく位? 命懸けの戦いの後なんだから、いちゃつきたくもなるでしょ。


「問、マスターは『リア充爆発しろ!』とか思わないタイプですか?」


 ・・・若い時ならそんな性欲をたぎらせ嫉妬した時も少しは在ったけれど、或程度の年に為ると股間・・・もとい好感の持てる若者達の愛の営みは微笑ましく思えるんだよ。


「・・・マスター、良い話にしようとしていますが台無しです」


 さてと、ラヴィとじゃれるのはこれ位にして、問題はこれからだよな。


「改めまして、危ない所を助けて頂き有難う御座います。 Bランクパーティー〈双翼の三つ鳥〉のラングと言います。

 そしてこちらが、リンダ、ルイク、ローザ、向こうで眠っているのがレグリオで介護しているのがラーシャです。

 ・・・もし宜しければ、名前を教えて貰えないでしょうか」


「Dランク、ジョン・スミスです、救援が間に合って良かったです」

 爽やかに答える(フードを被り、メガネをして、口元を布で覆ている)?


「D、Dランク! えっと、あの、もしかして〈極煉〉の関係者か?」


 おや、新情報。

「〈極煉〉? 無関係ですけれど、それが何か?」


 ホッとした様な顔をして答えてくれた。

「いえ、最近結成したばかりのパーティーで全員がDランクなのだが数日で20階層迄到達したのが〈極煉〉なんだ、だから20階層に居るジョンさんもDランクと聞いてもしかしたら関係者なのかと思ってしまい、・・・すみません、余計な詮索はご法度でした。」

 申し訳なさそうに頭を下げるラング、側で「何やっているの!」と小突くリンダ、仲良いね君達。


「頭を上げて下さいラングさん、別に気にしませんよ。

 それよりこれから如何するんですか? 怪我の治療は出来ましたけど流した血は回復していないでしょ」


「はい、取り敢えずは20階層のセーフポイント迄行ってレグリオの回復を待ってから帰還しようと思います」


「帰還珠や転移珠は?」


 ラングは頭を左右に振り。

「どちらも切らしています、専門店でも売り切れていたのでダンジョンで入手出来ればと思ってはいたのだけれども、そう思い通りには行かなくて・・・いや、これは言訳ですね、焦ってしまったんです」

 そう辛そうに呟くラングの隣で心配そうに見つめるリンダ。


 おじさん帰って良いですか?


「問、見捨てますか?」


 言葉の綾です!


「帰還珠なら手持ちが在りますけれど買います?」

 そう言って帰還珠を見せる。


「え、良いんですか! しかし、ジョンさんの分が無くなるのでは?」

 食い入る様に帰還珠を見ているが此方の心配もしている様だ。


「それは御心配なく、もう一つ複数回使える帰還珠を持っていますから。

 金貨12枚(120,000パル)で如何いかがです」

 相場が確か1回きりの帰還珠で金貨10枚(100,000パル)だからダンジョン価格という事で。


「買います! 有難う御座います! これでレグリオを安全な場所に移せます!」

 涙ぐみながらお礼を言い硬貨を集めている。


「・・・はい確かに120,000パル在ります、では此方をどうぞ」

 帰還珠をラングに渡した。


「有難う御座います、早速地上に戻らないと!」

 嬉しそうに機関の準備を始めた。


「あ、このオークのドロップアイテムを分けないといけないですね」

 おじさんがそう提案するとラング達は慌てて。


「とんでもない! それはジョンさんが討伐したオークです! ドロップアイテムもジョンさんの物ですよ! 此方の事はお気に為さらずにこれでもBランクパーティーです蓄えはきちんと有ります、お気遣い頂いて有難う御座います」

 なんかかえって気を使われた、まぁそういう事なら遠慮なくマジックバック(中)に収納した、予想通りマジックバック(中)に驚いていたが問題ない。


「ジョンさん今回は本当に有難う御座います! もしダンジョンから戻ったら声を掛けて下さい! 改めて御礼がしたいので! では、レグリオの事も在りますので戻ります」

 リンダ「ジョンさん本当に有難う」

 ルイク「有難う、今度エールを好きなだけ奢るよ!」

 ローザ「あんたがのみたいだけでしょう!まったく、ジョンさん助かりました!ラーシャが悲しまずに済んで本当に良かった」

 ラーシャ「ぐす、ジョンざん レグリオを助けてくれて本当に有難うぅ」

 それぞれにお礼を言われている内に帰還珠が発動して彼らが魔法陣に包まれる。


「では、お気をつけて戻って下さいね」

 手を振りながら声を掛ける、魔法陣の光と共に彼らはその場から消えた。

 ふむ、あんな風に発動するんだ帰還珠って、さてとラヴィ!


「解、認識阻害・記憶改竄は問題無く機能しています、彼等はマスターの事を誤認した状態で記憶しています。戻った頃にはジョン・スミスと言う従魔を連れたDランク冒険者の男、程度でしか覚えていません」


 ドゥジィンさんのメガネを参考にチャチャ達のマスクを製作して、ついでに誤魔化す為のスキルも試したけれど上手く機能したみたいだ、あれ? 今更だけれども人体に影響とか出ないよね?


「解、簡単な思い違いを起こさせる程度ですので直ちに人体には影響は在りません。 ご安心を!」


 なんか不穏な言葉が在った様な気もするけど、ラヴィのいつもの冗談だと思っておこう。


 取り敢えずは簡単に面が割れる事は無いと言う事だな。


 寄り道はしたが、いよいよ階層主の討伐に向かうかな。

 

 

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